2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハイクオリティ原子層ヘテロ構造の作製とバレーフォトニクスデバイスの創製
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16H03825
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北浦 良 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50394903)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子層 / 励起子 / 蛍光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に続き最終的なデバイス構造を作製するために必要となるヘテロ積層構造の構築法の確立を進めるとともに、極低温における顕微分光システムの立ち上げを行った。以下、具体的な研究内容に付いて概要を示す。 昨年度に改善した装置を用いて結晶成長をした単層の遷移金属ダイカルコゲナイド(単層TMD、ヘテロ積層構造の個々の構成要素)を用いて、オールドライ転写法による積層構造の作製を検討した。このプロセスでは、六方晶窒化ホウ素(hBN)を使ったドライピックアップ&転写を連続して行うことで、ヘテロ積層構造を作製する。この場合、hBNによって単層TMDが覆われてしまうため、電子線リソグラフィとリアクティブイオンエッチングによって予めhBNへコンタクトホールを設けておく方法を採用した。この新たに導入したプロセスを用い、hBN/WS2/hBN, hBN/MoSe2/hBNおよびhBN/MoS2/hBNのヘテロ積層構造を作製することに成功した。作製したヘテロ積層構造では、WS2において室温でのキャリア移動度が50 cm2/vs程度と良好な特性を示し、発光分光スペクトルでは、hBN/MoSe2/hBNでは10 Kで半値幅が4 meV以下という極めてシャープな発光が現れた。これらは、作製した試料が高品質であることが示している。 これらヘテロ積層構造を評価するため、昨年度に導入した高感度電子冷却CCDカメラに加えて、EMCCDを新たに導入し、それとクライオスタットを組合せた高感度極低温イメージングシステムを構築した。これを用い、極低温までの励起子拡散の観測を行ったところ、界面ラフネスによる散乱で励起子移動度が制限される量子井戸とは異なる挙動を観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に予定していたMBEおよびCVD装置の改良は予定通りに終えたのち、それらを用いて成長したTMDを用いたヘテロ積層構造の作製は順調に進んでいる。さらに、予定していた装置の準備(EMCCDを新たに組み込んだ極低温蛍光イメージングシステム)も終え、それを用いた試料の評価が順調に進んでいる。オールドライピックアップおよび転写法をベースとするヘテロ積層構造作成と、新測定システムを用いた観測が上手く噛み合い、新たな知見が得られつつある。以上のことから、おおむね順調に進展している判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定通り、初年度および二年目に確立した装置および手法を用いてヘテロ積層構造の作製を続けるとともに、分光および電子物性測定の結果をフィードバックすることでクオリティの改善すすめる。前半は、デバイスの作製と基礎的な評価を中心にクオリティ改善を続け、後半からはもっともクオリティの高いデバイスを対象に、発光イメージングを通してTMDに特徴的な挙動の観測を行う。最後に、pn接合の作製を進め最終的な目標であるTMDの特性を活かした発光デバイスの実現へと繋げていく。
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Research Products
(8 results)