2017 Fiscal Year Annual Research Report
全無機水分散性コア/シェル構造シリコン量子ドットのバイオフォトニクス応用展開
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16H03828
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 稔 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00273798)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子ドット |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体量子ドットは,生体内蛍光材料としてさまざまな魅力的な特性を有している。代表者らは最近,ホウ素とリンを高濃度にドーピングしたシェルを有する新しいタイプの水分散性シリコン量子ドットを開発した。この量子ドットは,バイオメディカル応用に有効な様々な特徴を有しており,極めて汎用性の高い新ナノバイオフォトニクス材料になる可能性を秘めている。本研究は,この新材料のバイオ応用のための汎用的基盤技術を開発することを目的とする。本年度は,以下の成果を得た。I) 酸化グラフェン支持膜を用いた低ノイズ透過型電子顕微鏡観察により、シリコン量子ドットがコア/シェル構造であることを示し,シェルの構造を明らかにした。II) Scanning Tunneling Spectroscopyにより,単一のシリコン量子ドットの状態密度スペクトルを測定することに成功した。これにより,ドナー凖位,アクセプター凖位,伝導帯端,価電子帯端,フェルミ凖位のサイズ依存性を明らかにした。II) 金属イオンを介してシリコン量子ドット間を結合する技術を開発した。これにより,シリコン量子ドット間の電荷移動を容易にし,量子ドット薄膜の電気伝導度を向上することに成功した。III) シリコン量子ドットと吸着分子間の電荷移動によるシリコン量子ドットの発光特性の制御を実現した。特に,分子吸着によりシリコン量子ドットの電子トラップを不活性化し,発光量子効率を向上させることに成功した。IV) シリコン量子ドットの光触媒能に関する研究を行い,触媒能がサイズに強く依存することを明らかにした。V)カレル大学(チェコ)のグループとの共同研究により,数種類の細胞に対してシリコン量子ドットの細胞毒性の評価を行った。VI) 直径100nm~200nmのシリコンナノ結晶のコロイド溶液を作製する技術を開発し,その誘電体ナノアンテナとしての性能の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画をほぼ完全に達成した。それに加えて,当初計画には無かったが,本プロジェクトで開発してきた技術を応用し,直径100nm~200nmのシリコンナノ結晶のコロイド溶液を作製する技術の開発に成功した。また,このようなサイズのシリコンナノ結晶が可視及び近赤外領域で高性能な誘電体ナノアンテナとして機能することを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり,計画に従って推進する。来年度は,主に以下の研究を実施する。I) 昨年度までの研究で、同時ドープシリコン量子ドットはコア/シェル構造であることがわかっている。しかしながら,コア/シェル構造形成の機構は明らかになっていない。量子ドットの成長時間と構造の関係を透過型電子顕微鏡及びラマン散乱により評価し、アモルファスシェル成長のプロセスを解明する。II) 現状では,シリコン量子ドットの平均サイズに対してサイズ分布の標準偏差が25%程度である。サイズ分離技術を開発し、より単分散に近い量子ドットを実現する。III) 量子ドットのバイオフォトニクス応用において、水中において安定して高い発光量子効率を示すことは非常に重要である。同時ドープシリコン量子ドットの水中における発光量子効率低下のメカニズムを解明し、それを抑制する技術の開発を行う。IV) 昨年度に引き続いて、カレル大学(チェコ)のグループとの共同研究により,シリコン量子ドットの細胞毒性評価及び蛍光バイオイメージングの研究を実施する。また、UCサンディエゴ(USA)と共同で、Time-gated imagingによる高感度検出の検討を行う。V) シリコン量子ドットを生体に導入した時に形成されるプロテインコロナの構造について透過型電子顕微鏡で詳細に調べる。VI) シリコン量子ドットと銀ナノ粒子からなる複合ナノ粒子について、殺菌能等の検証を行う。 VII) シリコン量子ドット蛍光検出型バイオセンサの実現に向けて、シリコン量子ドットによる抗体の標識化の研究を開始する。電子顕微鏡観察及び電気泳動法により標識化の実現を実証する。VII) 表面プラズモン共鳴によるシリコン量子ドットの励起断面積及び発光量子効率向上の研究を行う。特に、ギャッププラズモン励起によるシリコン量子ドットの発光増強を実現する。
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