2016 Fiscal Year Annual Research Report
SiC酸化膜形成過程に対する自律的位相空間探索による量子・古典ハイブリッド解析
Project/Area Number |
16H03830
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大野 隆央 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMS招聘研究員 (30344435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 聡志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30322069)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 計算物理 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
・第一原理計算の計算時間短縮を目指して電子状態の収束判定に用いる全エネルギー表式を調整するなどの収束性の向上を検討した。 ・ボンドオーダーにイオン項を組み込んだSi-O系の電荷移動型ポテンシャルを開発した。パラメータ合わせ込みにはアモルファス構造を中心として第一原理計算(PHASE/0)で求めた約5,000個の系,400,000個の物性値を使用した。Si(100)表面の初期酸化の動力学計算を実施した結果、酸化界面のSiO2層の密度分布などに関して実験結果と一致する傾向が得られた。 ・第一原理計算を用いて、4H-SiCのSi面およびC面の上部にアモルファス状のSiO2膜を重ねてアニールした系に対して、界面近傍にO2分子を連続的に供給して長時間MD解析を実施した。その結果、CO分子やCO2分子の脱離、Cクラスタの形成など熱酸化による界面構造の変化が得られた。CクラスタはC面界面ではSi面より大きく凝集する傾向が見られた。 ・PHASE/0による第一原理MD解析で得られた多数のSiC/SiO2界面構造を教師データとして、Si-C-O系の電荷移動型ポテンシャルを開発した。4H-SiCのSi面およびC面に関して、SiC/アモルファスSiO2界面付近に繰り返しO2分子を挿入して熱酸化シミュレーションを実施した。その結果、C面ではSi面より速く酸化膜が成長するなど実験結果と一致する様子がみられた。 ・SiC熱脱離によるグラフェンの成長を解析するため、Si-C系の電荷移動型ポテンシャルを開発した。パラメータの合わせ込みにはSiC表面のCクラスタ構造を含むPHASE/0で求めた約2,600個の系,210,000個の物性値を使用した。開発したポテンシャルを用いてステップを有する4H-SiCの高温アニールによるグラフェン成長過程の長時間古典MD解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算と古典計算の連携による量子・古典ハイブリッド解析に関しては、Si酸化膜やSiC酸化膜に適用し論文や学会で発表できるレベルの成果が出ており、量子論に基づいた電荷移動型ポテンシャルの有効性が確認された。SiC熱酸化シミュレーションに関しても、実験研究者との密な議論の下で、酸化過程の理解が進展しており、全体としておおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
・第一原理MD解析をより長時間化するため計算負荷の軽減を図る。第一原理計算における部分空間対角化、GS直交化、非局所ポテンシャル積分等の高い計算負荷の演算に関して、アルゴリズムの開発、及びプログラムの改良を実施する。 ・現在、第一原理計算を参照として遺伝的アルゴリズムに基づいて半自動的に実施している古典力場の最適化法を改良し、位相空間内を自律的・統計的にサンプリングし、その探索領域を格段に広げるスキームの開発を目指す。 ・第一原理および古典力場によるSiC/SiO2界面酸化シミュレーションを引き続き実施する。Si面やC面など界面構造の差が酸化速度など酸化過程に及ぼす効果に注目して、実験研究と連携しつつ、SiC/SiO2界面構造の変化、Cクラスタ形成、CO脱離、界面Si移動、欠陥準位形成など酸化に伴う界面形成過程の解析を進めSiC酸化機構の理解の深化を図る。同時に、解析手法の高度化と連携、古典力場の最適化などを検討する。 ・SiC熱脱離によるグラフェン成長過程の長時間古典MD解析を進め、SiC酸化膜以外の界面形成過程への量子・古典ハイブリッド手法の適用拡大を図る。
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Research Products
(7 results)