2017 Fiscal Year Annual Research Report
動脈病変の早期診断・治療のためのリン酸カルシウム系複合ナノ粒子の創製
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16H03831
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 真紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00568925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小菅 寿徳 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (00376774)
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50356672)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / 複合ナノ粒子 / MRI造影剤 / 動脈病変 / 早期診断・治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動脈病変の早期診断・治療を可能にする複合ナノ粒子の創成を目指す。具体的には、リン酸カルシウムをマトリックスとするナノ粒子に、イメージングのための造影剤ならびに治療のための治療薬を内包させる。最終的には、複合ナノ粒子を50~200 nmとすることで、血管投与ならびにマクロファージへの取り込みに適したサイズとする。 本年度はまず、本研究により作製法を確立した磁性酸化鉄ナノ粒子(造影剤)を内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子についてMRI造影能の評価を行った。本粒子の濃度を変化させて寒天液で固定し、MRIによる計測を行った結果、粒子濃度の増加につれて、強調画像のシグナルが減少し、緩和時間が大きく短縮したことから、本粒子がMRI造影能を有することを確認した。続いて、本粒子の細胞取り込み評価を行った。本粒子ならびに比較用の単独の磁性酸化鉄ナノ粒子を、それぞれ貪食性のマウスマクロファージ様細胞へ添加した結果、本粒子は単独の磁性酸化鉄ナノ粒子の2~3倍の取込率で取り込まれた。また、粒子添加・無添加条件下で24時間培養後の細胞数に有意な差はなく、この濃度において毒性は認められなかった。 また、前述の複合ナノ粒子の作製法を発展させ、磁性酸化鉄ナノ粒子(造影剤)に加えてマイクロRNA(治療薬)をも内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子の作製に取り組んだ。6種の医薬品注射液を用いて調製したリン酸カルシウム過飽和溶液に、磁性酸化鉄ナノ粒子溶液ならびにマイクロRNA溶液を添加し、穏やかな条件(25℃)で短時間(30分)静置した結果、磁性酸化鉄ナノ粒子ならびにマイクロRNAを含むリン酸カルシウム複合ナノ粒子を得ることができた。最適化された条件で作製された粒子の平均粒子径は約100 nm(動的光散乱法)であったことから、当初目標とした50~200 nmのサイズを満たす複合ナノ粒子を得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は、1年目に作製法を確立した磁性酸化鉄ナノ粒子(造影剤)を内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子について、MRI計測ならびに細胞実験による評価を行って有用性を示した他、磁性酸化鉄ナノ粒子(造影剤)とマイクロRNA(治療薬)を共内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子を作製した。得られた成果をもとに特許出願を行ったほか、学術論文誌や国際・国内学会でその成果を発表しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
①作製した複合ナノ粒子の動物による評価…前述の磁性酸化鉄ナノ粒子を内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子におけるMRI造影能の評価結果をもとに、動物において十分な造影効率を得るための粒子構造について再検討し、必要があれば新たに作製する(例えば、磁性酸化鉄ナノ粒子の内包量を増加させるなど)。複合ナノ粒子を疾患モデルマウスに投与し、病変部における粒子の集積を評価する。具体的には、組織切片観察ならびに摘出した病変部組織の鉄量測定を行うことを想定しているが、この病変部における粒子集積の評価法を確立することも課題の一つである。得られた知見をフィードバックし、作製条件ならびに粒子構造を最適化する。 ②リン酸カルシウムと内包物との相互作用解明…本研究の過程で、内包物(造影剤・治療薬など)の化学構造によって、リン酸カルシウムとの相互作用が大きく異なることが判明してきた。例えば、前述の磁性酸化鉄ナノ粒子を内包したリン酸カルシウム複合ナノ粒子では、磁性酸化鉄ナノ粒子の表面を被覆する有機高分子が、リン酸カルシウムとの相互作用を増強していると考えられた。リン酸カルシウムとの相互作用は、生成複合ナノ粒子における内包物の量や粒子サイズに大きく影響する。そこで、種々の有機高分子で被覆され、かつ、造影剤あるいは治療薬となりうるナノ粒子(金属あるいは金属酸化物)を用いて、有機高分子の構造がリン酸カルシウムとの相互作用に与える影響について検討する。具体的には、リン酸カルシウム過飽和溶液と様々な構造を有する有機高分子で被覆されたナノ粒子を混合し、析出物を得る。析出物の形態・組成と有機高分子の構造の関係を解明することで、造影剤や治療薬を内包したリン酸カルシウム系複合ナノ粒子の設計指針を示す。
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Research Products
(11 results)