2016 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of membrane morphogenic materials for nano medicine
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16H03842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノチューブ / ナノバイオ / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナノ微粒子による膜モルフォジェネシスの誘導に重点を置いて研究を推進した。具体的な研究成果を以下に述べる まず、ナノ微粒子の運動エネルギーを脂質膜の形態変化に変換する手法を確立した。申請者の先行研究において、巨大リポソーム中にシリカなどの荷電ナノ微粒子を内包し、ここに電圧やせん断応力などの外部場を印加することで、外部場により配向した脂質膜ナノチューブが大量に作製できることを見いだしてきた。このチューブが物質輸送システムとして機能させるにはその物理化学的な諸物性の精査が必要不可欠である。この目的のもと、脂質ナノチューブの基礎物性について、蛍光消光後回復測定、超高解像蛍光顕微鏡観察、X 線および中性子散乱測定などにより検討した。その結果、本手法により形成されるナノチューブが100 nm程度の直径を有していることが明らかになった。また、その脂質二分子膜の流動性、厚みなどについての新たな知見を得た。さらに、脂質ナノチューブ作製に用いる脂質分子の種類、電場の印可手法・強度、ナノ粒子の表面物性・サイズなどの諸因子と、ナノチューブの生成速度、形態、脂質膜物性との相関について、網羅的な検討をおこなった。またナノ粒子とナノチューブのハイブリッド化についても予備的に検討し、申請者が他のこれまでの研究において知見を蓄積しているナノゲルを用い、タンパク質や核酸をはじめとする生理活性物質をそのゲル内部に安定に保持したナノゲルーナノチューブハイブリッドが作製できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ナノ微粒子による膜モルフォジェネシスの誘導に関して、基礎的な知見を得ることを目的として研究を推進した。その目的のもと、まず、物理化学的な諸物性の精査を行い、脂質ナノチューブの基礎物性について、蛍光消光後回復測定、超高解像蛍光顕微鏡観察、X 線および中性子散乱測定などにより多方面での検討を行い、脂質二分子膜の流動性、厚みなどについての新たな知見を得られた。また、脂質ナノチューブ作製に用いる脂質分子の種類、電場の印可手法・強度、ナノ粒子の表面物性・サイズなどの諸因子と、ナノチューブの生成速度、形態、脂質膜物性との相関についても知見を得られたことから、当初の目的を概ね達成できたものと考えられる。また当初は予定していなかったが、ナノゲルと脂質ナノチューブのハイブリッド化についても、検討を推し進め、非常に安定なナノチューブを作製できることを予備的に明らかにした点でも、順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、ナノ微粒子による膜モルフォジェネシスの誘導について継続して研究を推進する。具体的には、ナノ微粒子の運動エネルギーを脂質膜の形態変化に変換する手法の確立や、ナノチューブの生成速度、形態、脂質膜物性などについて、引き続き検討を行い、網羅的な知見を得る。これらに加え、脂質二分子膜をマイクロ微粒子の表面に固定化し、この微粒子の溶解や体積相転移により脂質膜に歪みを与えることで、人工細胞からの膜の出芽とそれに引き続く脂質ナノチューブの伸長ならびに微小ベシクルの放出を実現する。このような膜モルフォジェネシス制御系は、生体系ならびに人工系において既に類似の例が報告されている。例えば、生体系においては、細胞膜骨格がその構造を変えることで膜に歪みが生じ、その膜構造変化を誘起することが指摘されている。また人工系においても、膜に歪みをあたえることで微小ベシクルの出芽が見られることも示されている。これらの背景を踏まえ、まず微粒子からのベシクル放出挙動について検討する。 当初計画において、。ナノ粒子を泳動させる手法として、電場はに加え、細胞や細胞中に含まれる生体分子に対する信州が少ない磁場により磁性ナノ微粒子を泳動させることで、脂質ナノチューブを作製することを計画していた。しかしながら、当初に計画していたマイクロチャンバーを用いた系においては、系に磁場を均一に印可することが困難であったため、望んでいたナノチューブの作製を実現することができなかった。この点に関する対応策として、垂直方向に大面積で磁場を印可することが可能な新たなマイクロチャンバーの適用について、すでに検討をはじめ、均一な磁場印可が可能であることを予備的に明らかにした。そこで今後はこのチャンバーを用いた脂質ナノチューブの作製を行う予定である。
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