2017 Fiscal Year Annual Research Report
搭載分子の放出を時空間制御できる温度応答性脂質ナノデバイスの開発
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16H03844
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宗 慶太郎 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20318835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 敏 早稲田大学, 付置研究所, 研究員 (70454056)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / ナノ材料 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
遠隔操作により脂質カプセルから時空間を制御しながら機能分子を放出する方法論・技術の確立を目指す。この脂質カプセルには薬物、生体分子、化学反応試薬など様々な分子を搭載できるので、生きた細胞内で薬物や生理活性物質を放出するナノバイオ技術、あるいはマイクロ流体デバイスにおける微小領域での化学反応の制御に使えるナノ化学コンテナとして応用できる。光を熱に変換する分子システムを組み込むことで、指向性の高い近赤外線レーザー照射による脂質カプセル局所での温度制御が可能になる。本研究では、脂質カプセルの機能拡張と高性能化を図るとともに、この分子放出制御システムを細胞、動物、マイクロ流体デバイスに応用して、生体機能や化学反応の遠隔制御に使える一般的な基盤技術の開発を目的とする。 本年度は、脂質カプセルの表面に分子認識素子を取り付けることで、細胞内空間に脂質カプセルを導入する方法を検討した。具体的には、脂質カプセルの表面にシクロオクチンを配置し、これにアジド化した葉酸(がん細胞は葉酸受容体を高発現している)をクリック反応で結合させ、卵巣がん細胞による取り込みを蛍光バイオイメージングにより解析した。結果として、葉酸で表面修飾した脂質カプセルは未修飾の脂質カプセルに比較して卵巣がん細胞に多量に取り込まれ、細胞内空間に脂質カプセルを高効率で導入できるようになった。クリック反応を利用した脂質カプセル表面の遠隔修飾法は、さまざまな分子認識素子を脂質カプセル表面に取り付ける方法として利用できるので、特異的な分子認識を利用して脂質カプセルを目的の場所に配置する方法論として広く応用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする微小空間に脂質カプセルを配置する方法は、遠隔操作により脂質カプセルから時空間を制御しながら機能分子を放出する方法論・技術の確立に重要な要素となる。本年度は細胞内空間に脂質カプセルを配置するための方法が得られた。生きた細胞内で薬物や生理活性物質を放出する技術の確立に向けて、当初の予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、様々な温度で内包物を放出する脂質カプセルを開発し、この脂質カプセルの表面を機能分子で化学的に修飾することで、標的細胞内に脂質カプセルを高効率で導入することにも成功した。また、近赤外線レーザーによる局所加温や、微小領域の温度モニターの方法についても成果が得られている。今後は、この脂質カプセルに搭載した物質(蛍光色素、生理活性物質など)を細胞内や個体組織で放出制御した時の効果について具体的な検討を進め、搭載分子の放出を時空間制御できる温度応答性脂質ナノデバイスとしての実践的な応用についての研究開発を進める。
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Research Products
(6 results)