2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03846
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水上 成美 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (00339269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 和也 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (20734297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン流 / テラヘルツ波 / パルスレーザー / スピンポンピング |
Outline of Annual Research Achievements |
金属磁性体/非磁性金属二層膜にパルス光を照射すると、テラヘルツ波パルスが発生する。この現象は磁性体がパルス光を吸収することで超拡散スピン流が発生し、テラヘルツ波に変換されるため生じるとされるが、その現象の理解は全く十分ではない。本研究では、研究代表者の先駆的・独創的研究である「スピンポンピング効果」と「光励起テラヘルツ磁化ダイナミクス」を用いることで超高周波交流スピン流を創出し、その性質やスピン流・テラヘルツ波の変換機構を明らかにしつつ、スピン流を介した光・テラヘルツ波変換の実用可能性の知見を得る。以下、平成28年度の研究概要を記す。 まず、膜の厚みや非磁性元素を様々に変えた垂直磁化マンガンガリウム合金/非磁性金属ヘテロ接合膜をスパッタ法で作製し、時間分解磁気光学カー効果による磁化歳差ダイナミクスを調べた。測定の結果、0.1-0.2 THz 帯の交流スピン流の大きさと試料層構造や元素との関係について知見を得た。 並行して、光誘起テラヘルツ波輻射を検出するための測定系を独自に構築した。その測定系を用いて、Ta/CoFeB/MgO薄膜構造におけるテラヘルツ波輻射について調べ、過去の報告を再現することができた。また、試料の熱処理によってテラヘルツ波輻射が増強されることを発見したため、学会報告を行った。 構築した測定系を用いて、下地/マンガンガリウム合金/白金ヘテロ接合膜において、光誘起超拡散スピン流によって発生するテラヘルツ波輻射の検出に成功した。しかしながらスピンポンピング効果に伴うテラヘルツ波輻射の検出にはまだ至っていない。これは、金属ヘテロ構造薄膜と真空のインピーダンスミスマッチによってテラヘルツ波輻射効率が低下していることに起因していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、0.1-0.2 THz 帯の交流スピン流の大きさと試料層構造や元素との関係について知見を得ている。また、提案のマンガンガリウム合金系のヘテロ接合膜においても、光誘起超拡散スピン流によって発生するテラヘルツ波輻射の検出に成功した。光誘起テラヘルツ波輻射を検出するための測定系の構築が達成でき、学会報告できたことは一定の成果である。他方、スピンポンピング効果に伴うテラヘルツ波輻射の検出にはまだ至っていないが、原因は特定できており、研究の遂行に本質的な影響はないと考えている。以上のことから、研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上に述べたように、輻射効率を増大させるためにはインピーダンスミスマッチを解消することが重要である。今後インピーダンスの数値解析を行い多層膜の設計を行うことによって研究を推進できる。平成29年度には、より高い周波数帯のテラヘルツ波輻射を達成するため、マンガンゲルマニウムなどの新しい試料構造の作製を行うことが必要である。また、磁化ダイナミクスとテラヘルツ波輻射の関係を調べるため、すでに構築したテラヘルツ波輻射検出装置を発展させ、磁化ダイナミクスとテラヘルツ波輻射の同時計測の開発を進める。
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Research Products
(8 results)