2016 Fiscal Year Annual Research Report
融液イオン種の偏析係数を1とする真のニオブ酸リチウム・コングルエント融液の開発
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16H03855
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇田 聡 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90361170)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニオブ酸リチウム / コングルエント / 化学量論 / 結晶化起電力 / イオン種 / 酸素 / 擬三元系 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. Li2O-Nb2O5-Na2O系の融点マップを作成し「コングルエント+化学量論」組成を求める。 酸化物MxOyを添加して得られるコングルエント組成と化学量論組成が一致するニオブ酸リチウム結晶ではLiサイトに電荷補償のための空格子点がないことが理想である。そこでLiと価数の等しいNa2Oを添加したLi2O-Nb2O5-Na2Oの擬3元系でコングルエント点を求めた。擬2元系Li2O-Nb2O5のコングルエント組成(48.5~47.3 mol%Li2O)近傍でNa2Oを添加した約15の組成による焼結体試料を作製し、これらの融点を示差熱分析で測定し融点分布マップを作成した。融点はNa2O量の増加に伴い減少し、明確なコングルエント点は見出せなかったが、化学量論である50mol%Nb2O5線上の近傍には存在しないことからNa2O添加は有効ではない。また、K2Oは固溶しない。そこで、今後は、Li2O-Nb2O5-MgO系によるcs-MgO:LiNbO3結晶を研究対象にする。
2. cs-MgO:LiNbO3結晶成長時における界面近傍融液および結晶の組成変動を調べる。 cs-MgO:LN結晶ではすべての融液イオン種の平衡分配係数は1であり、界面の移動速度が変化しても溶質の偏析は起きず均質な結晶の育成が期待できる。しかしながら内在する界面電場によりイオン種の平衡偏析係数は1からずれる。そこで種々の電流印加のもとでcs-MgO:LNを育成し組成変動を調べた。電流により発生する電場によりイオン種の偏析係数が1からずれ、融液拡散層内のイオン種の濃度は変化するが、育成されたcs-MgO:LN結晶は均質組成をもつ。これは酸素を独立成分とする擬4元系のミクロな現象(イオン種の存在)が擬3元系のマクロな現象(通常の平衡状態図)に包含される物理原則を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したとおり、おおむね計画通りである。しかしながらLi2O-Nb2O5-MxOyによる(コングルエント+化学量論)の組成の探索においてNa2Oが明確なコングルエント点を持たないため、Li2O-Nb2O5-MgO系のcs-MgO:LNに研究対象を絞ることにした。そこで、若干研究計画を修正し、コングルエントではあるが化学量論ではないZnOを添加したc-ZnO:LNとcs-MgO:LN結晶に対してc-EMFの発生の様子及びイオン種の分布を比較することにより化学量論成長と非化学量論成長におけるイオン種分配の違いを検討し、真のコングルエントLiNbO3成長の育成を目指すことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
界面電場によりイオン種の偏析係数は1からずれ、融液拡散層内のイオン種の濃度は変化するが、結晶化に伴い育成されたcs-MgO:LN結晶は常にコングルエント組成をもつ。この謎を解くことが真のコングルエントLiNbO3結晶の成長の理解と育成の制御につながる。そこで次年度は以下の研究を行う。 結晶が成長し界面が移動するとイオン種が融液界面に偏析し界面電位が発生する。これを結晶化起電力(c-EMF)と呼ぶ。この起電力はイオン種の活量を反映し、その大きさは融液組成に依存する。c-EMFは、μ-PD装置で1mm径のLN結晶を融液から下降成長させ、その後、上昇再溶融させる時に現れるヒステリシス電位に相当する。その大きさはmVオーダーで精度よく測定できる。従来のコングルエント融液、c-LNのc-EMFはゼロではなく、イオン種が界面融液で偏析する。一方、cs-MgO:LN融液では界面電場が存在しない場合、いかなる引き下げ速度でもc-EMF=0となりイオン種の偏析が起きないこと、つまり、酸素を独立成分とする系で融液のすべての構成種の偏析係数=1である。しかし、実際のμ-PD育成では有意な界面電場が存在し、偏析係数は1からずれる。このズレはc-EMF≠0であること、また、融液拡散層においてイオン種の分布をEPMAで測定することでわかる。一方、コングルエントではあるが、化学量論ではないZnOを添加したc-ZnO:LNに対して同様の実験を行う。cs-MgO:LN結晶とc-ZnO:LN結晶に対してc-EMFの発生の様子及びイオン種の分布を検討することにより化学量論成長と非化学量論成長におけるイオン種分配の違いを研究し、界面不安定性について研究する。さらにこの不安定性とMgの分配係数の分配サイトによる変化、および、結晶のアンチサイト欠陥の存在との関連について研究する。
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