2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03856
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
沓掛 健太朗 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任講師 (00463795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 康祐 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (40714134)
太子 敏則 信州大学, 教育学部, 准教授 (90397307)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イメージング / 半導体結晶 / フォトルミネッセンス / 結晶欠陥 / 結晶評価 / データ科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発光イメージングによる半導体結晶中の欠陥特性の評価について、材料の違いを超えて共通する背景物理を明確にし、定量評価法を確立することを目的とする。本課題では、1)高空間分解への展開(対象BaSi2)、2)ワイドバンドギャップ材料への展開(対象SiC)、3)計算機を用いた解析の拡張、の3研究項目を設定している。以下に平成29年度の各項目の実績概要を述べる。 1) 山梨大学では真空蒸着法で作製したBaSi2薄膜からの発光を観測するために、薄膜中の欠陥の低減を行った。特に、薄膜の組成分布解析により判明した基板界面近傍の酸化を、蒸着前の原料溶融により検出限界未満まで低減できることを明らかにした。酸素混入を抑制したBaSi2薄膜からは、低温(9 K)において明瞭なPLの観測に成功した。 2) 信州大学では、TSSG法でのSiC溶液成長を実施し、4H-SiCが大半を占めるSiC結晶を得た。成長条件を適正化、具体的には成長温度到達後の早期種子づけによる種結晶基板のメルトバックや温度勾配の低減、溶媒の調整により、ステップフロー成長による4H単一のSiC結晶を得ることに成功した。二次元核成長により形成されたSiC結晶は、発光イメージングによる評価を進めている。またSiCウェハ評価用の発光イメージング装置の開発を行なっている企業との共同研究を開始し、結晶欠陥種類の同定や大面積でのイメージングなど、本研究の応用において大きな進展が期待できる。 3) 平成28年度に開発したデータ科学的手法による適応的なマッピング方法について、さらに研究を進めた。マッピング移動距離の低減、様々な分布への対応など、この方法についての知見を深め、応用に向けた技術を蓄積した。 上記に加えて、発光イメージの3次元解析やGaN結晶評価の共同研究など、当初計画にない研究にも着手しており、本研究の大きな発展が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、1)高空間分解への展開(対象BaSi2)、2)ワイドバンドギャップ材料への展開(対象SiC)、3)計算機を用いた解析の拡張、の3研究項目を設定している。以下に各項目の進捗状況を述べる。 1) 真空蒸着法で作製したBaSi2薄膜からの発光観測に向けて、薄膜中の欠陥低減に成果を得ている。基板界面近傍の酸化を組成分布解析により解明し、蒸着前の原料溶融により検出限界未満まで低減した。また酸素混入を抑制したBaSi2薄膜において、明瞭なPLの観測に成功した。 2) 様々な結晶成長条件下でSiC結晶を育成し、目視で確認できる欠陥の密度の大小を制御するための成長条件を得た。これまでに育成した結晶により、発光イメージング評価に適した試料を提供できている。またイメージング装置にワイドバンドギャップ材料の評価に対応する改造を行ない、装置条件・環境を整備した。 3) データ科学的手法を用いた適応的マッピングにおいて、マッピング移動距離の低減技術の開発、様々な分布への適用など、大きな研究進捗があった。また画像処理技術を応用して、発光イメージから所望の情報を抽出する方法の開発も並行して進めており、シグナル:ノイズ比の向上や欠陥領域の自動抽出・自動追跡などの成果が得られている。 また研究代表者の沓掛は、平成29年度秋に東北大学から名古屋大学に異動した。異動に伴い、本研究での主要装置である顕微発光イメージング装置は、平成30年5月に移設する予定である。これらの要因により、当初予定していた同装置を利用した研究の一部は平成29年度中に実施できず、平成30年度の研究に計画をシフトした。一方で、当初の予定にはなかったGaN結晶の発光イメージの定量評価に関しても、共同研究を開始し、結晶欠陥物性の定量評価について新しい知見が得られはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的達成に向けて、本研究では、1)高空間分解への展開(対象BaSi2)、2)ワイドバンドギャップ材料への展開(対象SiC)、3)計算機を用いた解析の拡張、の3研究項目を設定している。それぞれの研究項目に対して、これまでの研究成果を踏まえて、今後の推進方策を述べる。 1) BaSi2薄膜の高品質化と、スパッタ法による表面パッシベーション膜作製に関する研究を進め、PL強度のさらなる増大を目指す。室温での発光が確認できた段階で、高空間分解発光イメージングによる欠陥分布の定量評価へ研究を進める。 2) PL評価で必要とされるSiC結晶を育成し、提供するとともに、ワイドギャップ材料として近年注目を集めているβ-Ga2O3(Eg=4.8eV)の結晶育成を行い、PL評価用に試料を提供する予定である。またSiCウェハ用の発光イメージング装置企業とも連携し、実用に則した評価原理の解明、手法の開発を進めていく。 3) 欠陥物性の定量に向けて、キャリアの生成・拡散・再結合の物理に基づく、計算モデルを発展させる。またデータ科学的手法、画像処理技術などを駆使して、発光イメージから情報を抽出する技術についても継続して研究を進める。
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