2016 Fiscal Year Annual Research Report
InAs量子ドットを用いた超広帯域近赤外波長掃引光源の開発とOCTへの応用
Project/Area Number |
16H03858
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
尾崎 信彦 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30344873)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, MANAファウンドリー, 主任エンジニア (10415771)
赤阪 隆史 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70322584)
久保 隆史 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (30316096)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 量子ドット / 近赤外広帯域光源 / 光コヒーレンストモグラフィー(OCT) / 分子線エピタキシー(MBE) / 結晶工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近赤外広帯域発光材料である自己組織化InAs量子ドット(QD)を用いて波長掃引型光源(SS)を開発し、医療用断層イメージング技術である光コヒーレンストモグラフィー(OCT)に応用することで、OCT画像の光軸分解能および画像深さの向上を目指す。 我々がこれまで開発したInAs-QDの発光波長制御技術を用いて、近赤外波長領域での広帯域光源を作製し、外部共振器により波長掃引範囲が従来光源よりも大幅に拡張されたSSを作製する。この光源を用いたSS-OCTを立ち上げ、光軸分解能の向上を図るとともに、高深達度を実現すべく、生体透過性に優れた近赤外波長帯での均一利得を得るようSS構造を最適化する。このSS-OCTが実現すれば、高分解能と高深達度を両立する画期的な医療診断ツールとなる。 平成28年度は3年計画の1年目にあたり、光源材料となるQD基板の開発と分割電極構造を持つ光源デバイス作製を中心に行った。また、SS-OCTシステムの立ち上げを行い、市販SSによる動作確認と画像取得を行った。 具体的な成果として、QDの中心波長制御技術を新たに開発し、これまで困難であった、発光強度を維持しながら中心波長を短波長化する方法を見出した。また、QDの波長制御というアプローチに加え、量子井戸の界面構造変調によって発光を広帯域化し、かつ発光強度を得る方法も開発した。これらの手法により、課題であった波長1ミクロン帯での高輝度発光が可能となり、大幅な発光帯域拡張の可能性が示された。また、立ち上げたSS-OCTシステムにより、市販SSの自己相関関数取得およびSS-OCT画像を得ることができた。 これらの成果により、概ね当初計画通りに研究が推進された。今後はQD-SSモジュール開発を進め、SS-OCT光源としての有用性を検証していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、平成28年度ではQDの中心波長制御技術を新たに開発し、特に従来よりも短波長側の発光中心を持ちながら発光強度低下を防ぐ成長方法を見出した。この方法により、課題であった短波長側(波長1ミクロン帯)での高輝度発光が可能となり、波長1~1.3um帯に渡る大幅な発光帯域の拡張が期待できる。これは当初計画で目標としていた帯域300nmをクリアする値である。また、既存光源を用いてSS-OCTシステムを立ち上げ、その動作も確認できており、これらの結果から、1年目の計画目標はおおむね達成できていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までの実績をもとに、平成29年度も当初計画どおり、提案光源の実用化に向けた研究を推進していく。まずは、平成28年度までに得られた広帯域なQD光源に対するSS光源としてのモジュール化を進め、波長掃引光源としての特性評価を行う。評価によって得られた特性を参考に、光源デバイスの構造や温度制御などの最適化を行い、SS-OCTシステムに導入する。導入したOCTによってテストサンプルや擬似生体サンプルの画像取得を行い、それらの結果から、本提案光源の実用性や優位性を検証していく予定である。
|