2017 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素同位体制御工学の実現に向けたダイヤモンドの物性解明
Project/Area Number |
16H03861
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
鹿田 真一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00415689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50332747)
石井 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (60737047)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 同位体 / 軽元素 / 電気・電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
同位体制御した結晶材料は、シリコンでは材料物性そのものは不変であるが、ダイヤモンドで12C純化した結晶は物質中最高の熱伝導がさらに1.5倍になるなど、「別物質」のような物性を有する。本研究では弾性・熱、光学、電子・量子に関して、物性そのものにフォーカスして計測・解析を行い、同位体制御の効果が物性に及ぼす影響を研究している。「ありふれた軽元素から極めて有用な物質創生」を視野に、同位体に関する知見を得ることを目的とする。以下、項目ごとに概要を記載する。 A-0)同位体制御ダイヤモンド合成: 酸素を高濃度に供給する成長条件を適用することで、ダイヤモンド厚膜の結晶性を向上できることを見出し、この条件で12C同位体濃縮ダイヤモンド厚膜を成長できる条件を見出した。 A-1)弾性・熱物性: 超精密測定による格子定数に関して、12C,13C同位体制御ダイヤモンド結晶の計測を実施し、補正項の関連で、従来格子定数は小さく評価されていることが明らかになった。またブリルアン振動法を用いた13C同位体制御ダイヤモンドの弾性定数計測を行い、微小な差を計測することが出来た。 A-2)光学物性: 深紫外CWレーザーを用いて12Cと13Cのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの温度依存性を評価した。CWレーザーにより極低温励起子を生成することが可能となり、非常に線幅の細いPLスペクトルから12Cと13Cのバンドギャップ差を精密同定することに成功した。また12C/13C超格子試料の時間分解PLスペクトルを世界で初めて取得し、その時間ダイナミクスに関する考察を行った。 A-3)電気量子物性:バルク及び薄膜に関して、移動度計測を低温から高温まで実施し、同位体制御の電子物性への依存性を計測するべく、ホール計測のための素子形成プロセスを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目ごとに進捗を記載する。 A-0)同位体制御ダイヤモンド合成: 酸素を高濃度に供給する成長条件を適用することで、ダイヤモンド厚膜の結晶性を向上できることを見出した。この条件で12C同位体濃縮メタンを原料に用いることで、12C同位体濃縮ダイヤモンド厚膜を成長できる条件を見出した。 A-1)弾性・熱物性: H28年に計測技術を確立した超精密測定による格子定数に関して、12C,13C同位体制御ダイヤモンド結晶の計測を実施した。過去の計測結果と、比較評価することが出来た。補正項の関連で、従来格子定数は小さく評価されていることが明らかになった。またブリルアン振動法を用いた13C同位体制御ダイヤモンドの弾性定数計測を行い、微小な差を計測することが出来た。例として、弾性定数C11は1075.4GPaと計測され、文献値に比べてわずかに-0.3%であることなどが判明した。 A-2)光学物性: 深紫外CWレーザーを用いて12Cと13Cのバンドギャップ差の精密評価を行うことができたので、本内容については現在論文に取り纏めているところである。また、12C/13C超格子試料の時間分解PL測定については実験結果が出始めたばかりであり、条件を振って実験を行うことで、そのキャリアダイナミクスの解明に取り組んでいる。 A-3) 電気量子物性:バルク及び薄膜に関して、移動度計測を低温から高温まで実施し、同位体制御の電子物性への依存性を計測するべく、ホール計測のための素子形成プロセスを実施した。次年度計測を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
項目ごとに今後の研究の推進方策を記載する。 A-0) 同位体制御合成: 昨年度見出した高品質ダイヤモンド成長条件を用いて、13C同位体濃縮ダイヤモンド成長を行う。特に、ダイヤモンドの厚膜化に取り組む。 A-1) 弾性・熱物性: 同位体制御の12C,13Cバルクダイヤモンド及び薄膜結晶、12C,13C超薄膜積層結晶に関して、ラマン分光による格子振動計測を行う。RF型サーモリフレクタンス法により、超薄膜での熱拡散率計測を行い、積層構造の場合の影響について検討する。 A-2)光学物性:昨年度、深紫外~可視領域にかけて低色収差の顕微分光測定系を構築することに成功した。そこで本年度は、同位体制御されたダイヤモンド試料の由励起子発光と欠陥発光のマッピング像を取得し、両者の相関について調べ、結晶性と光物性の関係を明らかにする。 A-3)電子・量子物性: 同位体制御の12C,13Cバルクダイヤモンド及び薄膜結晶、12C,13C超薄膜積層結晶に関して、移動度計測を低温から高温まで実施し、同位体制御の電子物性への依存性を計測する。
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