2018 Fiscal Year Annual Research Report
大規模第一原理スピン輸送シミュレーターの開発と革新的デバイス用界面構造の設計
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16H03865
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 倫也 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (80335372)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / スピントロニクス / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
界面電子状態の理解の深化と次世代デバイスとして期待されているスピントロニクスデバイスの高機能化・産業化に貢献すべく、電子論からデバイス用界面の機能予測ができる大規模高精度第一原理計算手法の開発とこれを用いた界面機能予測シミュレーションを実施している。平成30年度は、これまで開発・改良を続けてきたRSPACEを用いて、次に挙げる2種類のナノ構造の輸送特性を調べた。 1つ目は、実験グループと協力して、trimethylenedipyridineと、この分子が重合したpolyvinylpyridineの分子架橋系の電気伝導特性を調べた。電極/分子界面における原子構造を、実験的に予想される架橋構造をもとに第一原理計算により決定し、重合による架橋系の電子状態と伝導特性への影響を調べた。そして、重合による電気伝導度への影響がわずかであるという実験結果に符合する結果を得た。 2つ目は、二次元材料を用いた磁気トンネル接合の輸送特性を調べた。グラフェンをはじめとする二次元系材料は、スピントロニクスデバイスのチャネル材料として期待されている。本課題では、グラフェン及びh-BNをNi及びCoの強磁性金属で挟んだ磁気トンネル接合の磁気抵抗比を調べた。そして、Ni電極/グラフェン/Ni電極の系で磁気抵抗比が50%、Ni電極/h-BN/Ni電極の系で43%という高い値が得られることを明らかにし、グラフェンのような二次元系材料を用いた磁気トンネル接合構造がスピンフィルターとして有望であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計算機の仕様変更により、若干の方針変更が生じて繰り越しが発生したものの、影響は軽微であり平成30年度末までに遅れを取り戻した。平成29年度までに実施した第一原理伝導計算手法の開発は、学術誌において成果発表を完了している。また、平成30年度に実施した分子架橋系の電気伝導計算と2次元系材料を用いた磁気トンネル接合の磁気抵抗比に関する計算は、すでに原稿を学術雑誌に投稿している。平成30年度末には、平成31年度に実施予定であるCr2O3の2次元構造を用いた磁気接合素子のスピン分極した輸送特性計算の予備的計算に着手した。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、平成30年度に引き続きこれまでに開発・改良した実空間差分法に基づく第一原理電子状態計算・伝導特性計算コードRSPACEを用いた物質・デバイスデザインを行う。グラフェンは、炭素原子の小さいスピン軌道相互作用によるスピン緩和のしにくさから、スピントロニクスデバイス材料として期待を集めている。グラフェンは非磁性物質であるため、実際のスピントロニクスデバイスでは、強磁性電極を接続しスピン分極した電流を注入する。しかしながら、3次元的な結晶構造を持つ強磁性金属を電極として接続した場合、電極/グラフェン界面の格子定数不一致や電極表面の平坦性を起因とするキャリア散乱により、スピン注入効率が高くないことが解決すべき課題として挙げられる。一方、2次元材料は優れた平坦性と欠陥の少なさから、3次元的な金属結晶電極の代わりに電極として用いる方法が提案されてる。しかし、これまでに確認されている2次元物質は反磁性または非磁性物質であった。前年度までの我々の研究により、Cr2O3の2次元構造の電子状態がハーフメタルであること、そして2次元構造が安定的に存在できることを発見した。そこで、最終年度はハーフメタルの電子状態を持つCr2O3の2次元構造とグラフェン界面のスピン伝導特性を調べ、高機能スピン注入素子のデザインを行う。
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