2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high energy state-selected O2 beam and the method for a high sensitivity measurement
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16H03874
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
倉橋 光紀 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主席研究員 (10354359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子ビーム / 表面反応 / 立体効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 高エネルギー状態選別酸素分子ビームおよびStern-Gerlach分析器の開発 0.1-0.9eVの範囲で10点以上並進エネルギーを調整可能な状態選別酸素分子ビーム生成装置を開発した。600℃程度までのノズル加熱とシードビーム法を組み合わせ、超音速O2分子ビーム並進速度を調整した。有効長を調整可能な六極磁子を実験に使用しているが、その有効可変範囲を延長し、量子状態(J,M)=(2,2)のO2分子に対する通過エネルギー0.1-0.9eVを実現した。また、この並進エネルギー範囲のO2分子ビームのStern-Gerlach分析可能なビーム偏極度分析器を開発した。 2. Pt表面へのO2吸着立体効果研究への応用 Pt(111)表面へのO2吸着確率は、Rh,Ru, Pdなど同じく酸化触媒に用いられる貴金属表面での値の1/3程度と低く、O2分子の並進エネルギーを1eV程度に上げても、吸着確率が0.25以上に増加しない異常挙動を示すが、その起源は未だ不明であった。本状態選別ビームを用いたPt(111)表面へのO2吸着実験により、O2分子の並進エネルギーが0.2eV以下の低エネルギー条件では、表面に殆ど平行なO2分子しか直接過程による化学吸着に寄与できないために吸着確率が低いことを示した。また、0.4eV以上の高エネルギー条件においては、表面平行分子の吸着確率はエネルギーとともに減少し、垂直分子の吸着確率は増加傾向を示した。これらの挙動は、化学吸着の活性化障壁と散乱確率が分子配向に依存する点を基に理解できることを提案した。また、ランダム配向分子に対して過去に観測された吸着確率の飽和挙動は、表面平行分子と垂直分子の競合する挙動の総和として理解出来ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
状態選別O2ビームの並進エネルギーを1eV程度まで調整できるビーム源とこのエネルギー範囲のビーム偏極度分析を行えるシステム構築が、技術面での本年度の目標であった。この点については概ね達成できた。また、Pt表面へのO2吸着研究にも応用し、吸着確率の並進エネルギー依存性の理解に寄与する新しい知見が得られ、誌上発表まで済ませることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
貴金属表面へのO2吸着は、Pt(111)/O2系も含め、0.5eV程度以上のエネルギー範囲で異常挙動を示す場合が多いが、これらの系の研究に本装置を今後活用する。また、現在、吸着確率測定にKing-Wells法を用いているため、10-2以下の吸着確率測定は困難である。He散乱法、準安定脱励起分光法、XPSなどの表面敏感測定法を吸着反応検出に用い、10-4程度以下の吸着確率測定を目指す。実触媒として重要なナノ粒子表面をその場で作製する装置の開発、他の装置に組み込み可能な小型状態選別分子ビーム源開発等も今後検討予定である。
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Research Products
(8 results)