2016 Fiscal Year Annual Research Report
Ab initio simulation study on attosecond photoemission delay
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16H03881
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 顕一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70344025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 健 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30507091)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / アト秒科学 / 量子エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高強度レーザーパルスやアト秒パルス下における多電子ダイナミクスを、現実的な計算時間で正確に第一原理的に計算することができる時間依存多配置自己無撞着場法を開発している。本研究では、この手法によるシミュレーションを用いて、アト秒光パルスによるNeのイオン化実験で発見された、2s軌道および2p軌道由来の光電子放出の間に見られる時間差(光電子放出遅延)を再現し、そのメカニズムを解明する。イオン化で放出された電子は無限遠方まで飛び去るがシミュレーション領域は有限であるため、シミュレーション境界で非物理的な電子の反射が起こらないように、電子波束を吸収させる必要がある。我々はこれまで、簡易なマスク関数による吸収境界を用いていたが、シミュレーション領域を小さくして計算時間をより短くするため、当該年度は効率的な吸収境界である無限範囲外部複素スケーリングをシミュレーションに実装した。この方法は、径座標を複素平面に解析接続することで、システムハミルトニアンを変えることなく吸収境界として機能し、かつ全空間をシミュレーションできるという著しい利点がある。我々は、これを世界で初めて多電子系の時間依存多配置波動関数理論に適用することに成功した。その鍵は吸収領域での電子間クーロン相互作用と、吸収領域の電子から内側の非吸収領域の電子に作用するクーロン力を無視することである。慎重な検証の結果、これらはよい近似であることが分かり、結果としてシミュレーションを従来より5倍高速化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的な吸収境界として無限範囲外部複素スケーリングを実装することに成功し、シミュレーションの5倍の高速化を実現した。これによって、光電子放出遅延実験の再現シミュレーションに大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
先進的な吸収境界である無限範囲外部複素スケーリングを利用して、高速に角度分解エネルギースペクトルを計算するtSURFF法をシミュレーションコードに実装する。それから、時間依存多配置自己無撞着場法を用いて、光電子放出遅延実験の再現シミュレーションを行う。また、光電子放出遅延に密接に関係するウィグナー遅延時間を、2波長自由電子レーザーを用いて測定する方法を提案する。
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Research Products
(16 results)