2017 Fiscal Year Annual Research Report
先進プラズマ活用ナノカーボンアトミックエンジニアリングに向けた学術基盤の構築
Project/Area Number |
16H03892
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 俊顕 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20502082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
高島 圭介 東北大学, 工学研究科, 助教 (70733161)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェンナノリボン / プラズマ / アトミックエンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究三年計画の二年度にあたる今年度は, グラフェンナノリボンエッジ構造の評価とカーボンナノチューブの原子構造制御に関して重点的に取り組み以下の成果を得た. まず第一に, 我々が開発したニッケルナノバーを用いたグラフェンナノリボンの合成に関して,偏光ラマン分光分析を行った結果, 本手法で合成されたグラフェンナノリボンのエッジがジグザグエッジに近い構造を持つことが示唆された. さらに同測定を複数のグラフェンナノリボンが配列したグラフェンナノリボンアレーに対して行ったところ, D/G強度比のグラフェンナノリボン軸方向に対して平行方向成分の空間ばらつきが, 他の文献で報告されているグラフェンナノリボンに比べて極めて小さいことが判明した. これは, 本手法で合成された複数のグラフェンナノリボンのエッジが空間的に均一な構造を持っていることを示唆している. 第二に, カーボンナノチューブのカイラリティ制御合成に関して, 触媒の表面状態とカイラリティの関係を明らかにすべく実験を行った. その結果コバルト触媒の表面酸化度に依存して, 合成されるカイラリティ種が著しく変化することを見出した. さらに触媒表面状態を最適化した結果, 57%を超える高純度の(6,4)カイラリティナノチューブの合成に世界で初めて成功した. 詳細な理論解析も合わせて行い, 表面酸化度の変化によりナノチューブと触媒間の結合エネルギーが変化することが, カイラリティ選択性発現の主要因であることを明らかにした. 触媒表面状態制御に基づくカイラリティ制御手法はナノチューブ合成分野における新たなアプローチであり, 同一金属種の触媒の表面状態を制御するのみでカイラリティを変化させることができることから, 様々なカイラリティ種に適用できる大きな可能性を秘めた手法である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はグラフェンナノリボンとカーボンナノチューブに関して, 最終目標である原子構造制御に向けた研究を行った. その結果, 特にカーボンナノチューブに対して, (6,5)と(6,4)カイラリティナノチューブの選択合成に成功した. この二つのカイラリティの直径差は僅か0.1Å以下であり, まさに本研究課題の最終目的えある“原子レベルでの構造制御”と言える成果である. 当初の計画とは一部異なる点もあるが, 本年度得られた成果は最終年度である次年度のナノカーボン材料の原子構造制御に関する学術体系の構築に向けて極めて有用であると判断し, 当初の計画以上に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により, グラフェンナノリボンに関してはジグザグエッジに近い構造が支配的であることが判明した. そこで最終年度はグラフェンナノリボンのエッジ構造を制御することを目的とし, 特に高いオンオフ比を持つトランジスタ動作が期待できるアームチェアエッジを持つグラフェンナノリボンの合成を目指す. 一方カーボンナノチューブに関しては, 前年度までに開発した触媒表面状態制御の一般性を検証するため, 他の触媒金属に対して同様の実験を行ない, 様々なカイラリティの高純度合成を目指す. さらに, これらの知見をまとめたプラズマによるナノカーボンの原子構造制御に関する学術体系の構築を目指す.
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Research Products
(35 results)