2017 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ帯高強度コヒーレントエッジ放射の利用による自由電子レーザー制御の研究
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16H03912
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
清 紀弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20357312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
境 武志 日本大学, 理工学部, 助教 (20409147)
田中 俊成 日本大学, 理工学部, 教授 (30155147)
小川 博嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60356699)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子ビーム計測 / コヒーレントエッジ放射 / 自由電子レーザー / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本大学量子科学研究所の電子線利用研究施設LEBRAにおいて、コヒーレントエッジ放射の観測を行った。自由電子レーザー直線部の下流偏向磁石によって発生するコヒーレントエッジ放射を、共振器型自由電子レーザー発振を妨げることなく取り出せるエッジ放射用真空容器を開発し、既存の偏向磁石真空容器と交換した。このエッジ放射用真空容器は、水平70mrad以上かつ垂直40mrad以上の放射角のコヒーレントエッジ放射を真空容器にて反射することなく大気へ取り出すことができる。また、自由電子レーザー用の光共振器から大気へ取り出すための反射鏡を凹面鏡と中空凹面鏡とに切り換えられるミラー調整機構を有しており、中空凹面鏡を使用すれば自由電子レーザーが回折損失を生じることなくコヒーレントエッジ放射を利用できる。このエッジ放射用真空容器を用いて我々は、自由電子レーザー発振中のコヒーレントエッジ放射を世界で初めて観測することに成功した。電子ビームエネルギー59MeV、マクロパルス幅18マイクロ秒、繰り返し周波数2Hzの電子ビーム条件にて、中空凹面鏡を使用して観測したコヒーレントエッジ放射の最大出力は約0.35mWであった。この値は、干渉計によるスペクトル測定から評価したバンチ長を用いて計算したコヒーレントエッジ放射出力とほぼ一致していた。その放射特性と自由電子レーザー発振との間には相関があり、放射強度を高くすることで自由電子レーザー出力も高くなることが明らかになった。また、帯域の異なる二つの検波器を使用してコヒーレントエッジ放射強度を測定することで、マクロパルス内のバンチ長変化を観測できることを示した。 さらに、コヒーレント放射の新しい発生方法やバンチ長計測技術について検討して論文にまとめ、インパクトファクターの高い国際誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、平成29年度までに3つの要素技術課題について取り組むことを予定していた。各々の要素技術課題については以下に記したように、計画通りかそれ以上の成果を挙げている。また、成果発表についても研究期間内に筆頭著者で5報の論文が掲載されており、内1報はJJAP編集者にSpotlightsに選定されている。総じて概ね順調に進展していると判断できる。 ・ コヒーレントエッジ放射の特性解明:コヒーレントエッジ放射の2次元空間分布を測定し、運動する荷電粒子の放射理論が示すように、水平方向には非対称な中空構造をしていることを観測した。また、干渉計を使用してコヒーレントエッジ放射のスペクトルを測定し、ノイズフロアから2THz以上までコヒーレントエッジ放射成分があることを確認した。 ・ コヒーレントエッジ放射を利用したバンチ長測定:電子ビームエネルギーが低い場合は、自由電子レーザー用光共振器からコヒーレントエッジ放射を取り出すミラーによってコヒーレントエッジ放射のスペクトルに変化がないことを観測によって示した。これにより、自由電子レーザー発振中のコヒーレントエッジ放射スペクトルを世界で初めて観測し、二乗平均平方根バンチ長が0.3ps以下であることを明らかにした。 ・ 加速高周波位相最適化による自由電子レーザー制御の実証:交付された補助金が当初計画より不足していたため、自由電子レーザーミクロパルスの観測は既存の検出器を使用した。コヒーレントエッジ放射強度と自由電子レーザー強度の同時測定を行い、両者に正の相関があることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コヒーレントエッジ放射を利用した自由電子レーザー制御の実証 昨年度までの研究によって、自由電子レーザー発振に至るには加速高周波位相の制御に加えて磁気圧縮の条件を最適化し、直線部におけるバンチ長を短くすることが重要であることが明らかになった。コヒーレントエッジ放射強度に加えてスペクトルもFEL強度と同時に測定し、電子ビームエネルギーやFEL発振波長をパラメータとして、両放射の強度やスペクトルとの間の関係を解析する。自由電子レーザー発振に適したコヒーレントエッジ放射特性を導出し、実際の電子ビーム運転に適用する。 2.自由電子レーザー相互作用によるパルス長への影響の解明 自由電子レーザーがアンジュレータ内で電子ビームとエネルギーの授受を行うため、電子のミクロパルスはそのバンチ波形に歪みを生じる。共振器型自由電子レーザーが増幅してから飽和に至るまでには、数百~数万個の電子ミクロパルスが必要なため、自由電子レーザー出力の飽和過程ではミクロパルスのバンチ長も変化していると予測できる。そこで昨年度構築した、異なる帯域を検出できる二つのダイオード検波器を用いた検出システムを使用し、我々が開発した二帯域測定法によってマクロパルス内のバンチ長変化の観測を行う。アンジュレータ内における自由電子レーザーと電子バンチの相互作用領域は、自由電子レーザーの波長に比例するため、この測定は電子ビームエネルギーや波長を変数として取り扱って実施する。
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Remarks |
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ https://unit.aist.go.jp/rima/rad-imag/
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Research Products
(10 results)