2019 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03922
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中西 知樹 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (80227842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国場 敦夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70211886)
尾角 正人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 団代数 / 散乱図式 |
Outline of Annual Research Achievements |
団代数の基礎に関する研究として、団パターンと散乱図式の関係に関する以下の研究を行なった。 Fomin-Zelevinsky (2007)は団代数の背後にある代数的組み合わせ論的構造である団パターンに対する新しい手法を導入し、さまざまな予想を与えたが、中でも(1) C行列の符号同一性、(2) Laurent 正値性 (Laurent positivity)の二つが重要である。 Gross-Hacking-Keel-Kontsevich (2018)は、この二つの予想を散乱図式の手法を用いて解決をした。この論文のプレプリントが出たのは2014年末であり、それ以来団代数理論の研究者に対する重要な文献となっている。一方、この論文は、上の二つの予想の証明も含め大変難解で、ごく一部の団代数理論のエキスパートにのみ理解されている状況が長らく続いてきた。したがって、この状況を改善し、より明解に団パターンと散乱図式との関係を明らかにし、また上の予想の証明を理解することは、私を含む団代数理論の研究者の課題であった。本研究では昨年までの準備を経て今年度本格的にこれに取り組み、その結果、Gross達の理論からトーリック幾何の設定を取り除き、純粋に散乱図式の構成定理だけに基づき、団パターンと散乱図式の関係を確立し、それを用いて上の二つの予想(定理)の証明を再構成することに成功をした。以上の結果を、論文としてまとめ2021年3月にarXivに投稿をした。 Tomoki Nakanishi, Cluster patterns and scattering diagrams, arXiv:2103.16309, 70 pages.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年までの準備を経て、本研究課題の主要な課題の一つであった団パターンと散乱図式の関係の確立できた。要因としては、C行列の符号同一性と、団パターンにおけるG扇と散乱図式の壁との関係を正則木の距離に関する帰納法を用いて「同時に」示すことができることに気づいた点が最も重要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の、団パターンと散乱図式の関係の確立の結果を踏まえて、次年度(最終年度)は、さらに一歩踏み込んで、散乱図式の構成における団変異から与えられる壁関数の役割を理解し、最終的には、散乱図式を取り除いた形でC行列の符号同一性の証明を与えることを目標とする。
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Research Products
(2 results)