2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03925
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤野 修 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60324711)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 極小モデル理論 / 標準束公式 / 混合ホッジ構造の変動 / 対数的標準環 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度も実り多き一年であった。標準束公式の一般化としてbasic slc-trivial fibrationという概念を導入した。以前、藤澤太郎東京電機大学教授や斉藤盛彦京都大学数理解析研究所准教授らと混合ホッジ構造の変動の研究をおこなったが、その結果を高次元代数多様体論に有効に活用するための枠組みは未整備であった。今回新たにbasic slc-trivial fibrationという概念を定義し、極小モデル理論をはじめとする高次元代数多様体論への応用を本格的に開始した。一つ目の大きな結果は、Haidong Liuさん(当時京都大学大学院理学研究科の大学院生)との共同研究によるDu Bois特異点に関する結果である。擬対数的標準対はDu Bois特異点しか持たないであろうという予想が数年前にHaidong Liuさん本人によって提唱されていた。私はそのようなことは成立しないであろうと思っていたのだが、今回のbasic slc-trivial fibrationの理論の応用として比較的簡単に肯定的な解決にたどり着いた。その後、藤澤太郎さんとHaidong Liuさんとの共同研究で、basic slc-trival fibrationの底空間が1次元のときはモジュライパートが半豊富になるという結果を証明した。モジュライパートの半豊富性はとても重要な未解決問題である。この他にもHaidong Liuさんと共同でPLT対で小平次元が2のものの対数的標準環が有限生成であるという定理を証明した。これはもっと一般的な重要な未解決問題を解決するための初めての非自明な第一歩であり、満足すべきものだと思う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ここ数年は順調に研究が進んでいる。擬対数的標準対がDu Bois特異点しか持たないというHaidong Liuさんの予想をすっきりと完全解決できたことは想定以上の成果である。数年前にはこんな予想はもし正しくても到底証明できないだろうと考えていたので、この数年の研究の進展はかなり大きいと言って良いと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
順調に研究は進んでいるので、今後もこの調子で研究を続けるだけである。問題は研究以外の仕事が年々増え、研究に使える時間的、精神的余裕が減ってしまっている点である。時間と心の余裕さえあれば、それなりの研究成果を上げることは難しくないと思う。混合ホッジ構造の理論を用いて各種消滅定理を一般化した話と混合ホッジ構造の変動を用いて新しく定式化した標準束公式の一般化があるので、一昔前には全く手が届かないと思われていた難問のいくつかには手の届くところまで近づけているのかもしれない。いずれにせよ、可能な限り研究を頑張りたいと思う。
|
Research Products
(7 results)