2017 Fiscal Year Annual Research Report
Non-commutative stochastic analysis and mathematical study of networks
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16H03939
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾畑 伸明 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10169360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 雄央 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (10528425)
瀬川 悦生 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30634547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子確率論 / スペクトル解析 / ネットワーク数理 / 量子ウォーク / 確率解析 / 量子ホワイトノイズ / 直交多項式 / グラフスペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目標は、可換な変数を非可換代数に埋め込み、非可換代数の表現を通して統計性の本質に迫る「非可換系の確率解析」の体系化にある。設定した主要4課題に対して、国際共同研究を含む研究実施体制を整えて、いくつかの課題を解決し、国際会議や論文で発表した。 (1)量子確率論 強正則グラフ対のスペクトル解析を継続して、スケーリング極限分布を導出した。その過程で、2変数クラウチュク多項式およびその極限多項式が青本-ゲルファンド超幾何関数で表示されることが分かった。成果はアメリカ数学会の関連分科会における口頭発表や日本数学会関数解析分科会特別講演などで公表した。 (2)量子ホワイトノイズ解析 ボゾンフォック空間上の作用素を量子ホワイトノイズを座標関数として表現して、非可換無限次元解析学として体系化することを目標としている。特に、量子ホワイトノイズによる微分演算によって、様々な作用素を微分方程式の解としての特徴づける課題整理を継続している。 (3)量子ウォーク スペクトル解析による量子ウォークの漸近挙動の解析を継続するとともに、周辺分野との共同研究が進展した。シュレディンガー方程式に従う平面波のダイナミクスを量子ウォークモデルで模倣して量子力学的性質が量子ウォークに帰着できることを示した。 (4)ネットワーク数理への展開 べき分布を次数分布にもつコンフィグレーションモデルの連結成分の統計的性質についてシミュレーション結果を集積した。特に、第2連結成分に注目した臨界現象を確認して、べき指数の臨界点についての予想を立てるとともに、既存研究との比較と数理的なアプローチを検討した。グラフの距離行列のスペクトル解析に関連して、新たにQE定数という特性量を定義して、基本的な性質を明らかにするとともに、グラフの分類論への応用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要4課題について一定の成果が上がっている。 (1)量子確率論 強正則グラフ対に付随する2変量のスペクトル分布及びグラフサイズ無限大の極限分布を導出の具体的な計算を通して、2変数直交多項式を構成することができたため、その多項式の満たす漸化式から量子分解法の2変量化を探る道筋が見えてきた。 (2)量子ホワイトノイズ解析 量子ホワイトノイズによる微分方程式論においては一定の成果が得られた。これを基に、繰込みなどの量子物理に動機づけられた課題、古典・量子対応による古典確率への応用が視野に入ってきており、これまでの断片的な成果を踏まえて系統的に課題設定する段階に来た。 (3)量子ウォーク 量子ウォークのスペクトルを用いた新しいタイプのグラフの同型問題に取り組むとともに、工学的応用につながる成果が得られつつある。光パルスを用いた重分子同位体分離技術において、経験的な数値実験にかわる量子ウォークモデルを提案して、励起が促進される同位体の量子回転エネルギ分布を与える明示的な公式を導出した。これによって、実験をデザインするときに必要な効果的なパラメータ設定の提案が可能になることが期待される。 (4)ネットワーク数理への展開 グラフのスペクトル的な特性量として導入したQE定数の基本的性質がわかってきたことから、グラフの分類論への応用の見通しがついてきた。これは当初予期していなかった新しい展開である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様に、研究分担者とともに国際共同研究の体制を維持して課題の解決にあたる。 (1)量子確率論 強正則グラフ対のスペクトル解析を継続するとともに、そのアイデアをアソシエーションスキームに拡張する。その中で、量子分解法の多変量化を探る。 (2)量子ホワイトノイズ解析 繰込みなどの量子物理に動機づけられた課題を整理して、量子ホワイトノイズの応用を広げる。また、量子ウォークの連続極限との関連を議論する。 (3)量子ウォーク 分布の時間発展と極限分布の分類を、適切な統一化されたモデルに対して考察する。量子物理への応用とともにグラフの構造解析への応用を検討する。 (4)ネットワーク数理への展開 引き続き、コンフィグレーションモデルの第2連結成分に関するシミュレーション結果を集積して、臨界現象の数値解析を行いつつ、数学的な定式化と厳密証明を模索する。新たに提案したQE定数に関して、その基本的性質を集積するとともに、具体例を計算する。特に、グラフ積や部分グラフの構造を利用した計算公式の導出をめざす。
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