2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution equations describing non-standard irreversible processes
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16H03946
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶木屋 龍治 佐賀大学, 理工学部, 教授 (10183261)
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
岡部 真也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70435973)
小池 茂昭 東北大学, 理学研究科, 教授 (90205295)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 解析学 / 函数方程式 / 非線形解析 / 不可逆過程 / 発展方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
分数冪ラプラス作用素を含む Cahn-Hilliard 系に対する Cauchy-Dirichlet 問題について考察した. ただし分数冪ラプラシアンに対しては通常の Dirichlet 条件ではなく, 領域の外部全体で対象となる関数 (解) がゼロになるという solid 型の Dirichlet 条件を課す. これは分数冪ラプラシアンは冪が 0 に近いときにトレースが定義できないようなソボレフ空間を定義域に持つこと, また確率論的には分数冪ラプラシアンがジャンプ過程の生成作用素であるため, 領域外へジャンプしてしまう粒子を全て消す必要があることに由来する. 分数冪ラプラシアンは(全空間で定義される)非局所作用素であるが, 方程式は領域上でのみ成立するため, 古典的な CH 系と異なり 1 本の方程式にはまとめられない. ここで得た結果の概要は以下のとおりである. (1) 初期値境界値問題の適切性:時間離散化法と変分法を用いた近似解の構成, さらにエネルギー評価による近似解の一様評価, そしてコンパクト埋め込み定理等を用いた近似解の収束と極大単調作用素論に基づく極限の特定を行うことで, 解の構成を行った. CH 系に現れる 2 つの分数冪ラプラシアンの冪を別にした (これは関連する特異極限問題の研究からの要請である.) ために適用できる連鎖律が知られておらず, 特にエネルギー不等式の導出に於いて困難が生じた. (2) 解の長時間挙動の分析:Lojasiewicz-Simon 勾配不等式を用いてオメガ極限集合が一点集合になることを示した. (3) 解の正則性・有界性: (2) で得た定理の一部には解の有界性に関する仮定がなされている. ここではその検証を行った.
その他, Fast Diffusion 方程式の漸近形の指数安定性に関する予備的な調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分数冪ラプラシアンを含む Cahn-Hilliard 系に対して H29 年度に予定されていた計画は概ね完了している. (2) については後述する観点からさらに研究を推進し, その上で学術論文へまとめる予定である. また Fast Diffusion 方程式の漸近形の指数安定性については, さらなる展開があるかもう少し様子を見てから論文にまとめたい.
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Strategy for Future Research Activity |
(2) では特にオメガ極限集合が 1 つの定常解からなるかどうかが問題だった. 実際, (有限次元の) 勾配系であっても (Lyapunov 関数が C∞ 級であるにも関わらず) オメガ極限集合が 1 点集合にならない例が知られている. 一方, ここで考えている CH 系の Lyapunov 関数は冪型の非線形項を含むため, C∞ 級の正則性すらない状況である. またこのような問題に対しては, Lojasiewicz-Simon の勾配不等式を用いたアプローチが有効であるが, solid 型の Dirichlet 条件を伴う分数冪ラプラシアンに対しては同不等式が知られていない. 一方, Lojasiewicz-Simon の勾配不等式はここで考える問題以外にも幅広い応用があるため, なるべく一般的な形で証明しまとめておくことは意義が非常に深い. よってここで得られた一連の結果は, それらが完遂された時点で論文として発表する予定である.
また Lojasiewicz-Simon の勾配不等式に現れる指数の特定は, 収束の速度や安定性の度合いを測る上でも極めて重要である. R. Chill が 2000 年ごろにそれに関する幾つかの研究成果を発表している. ここでも Chill の研究を参考に, 指数を特定するための方策について検討したい. また実際に指数を特定することで, Fast-Diffusion 方程式の解の安定性に関してより定量的な結果が導けるか検討する. 実際, 定常解が非退化 (つまり線形化作用素が 0 固有値を持たない) 場合は, 指数安定性を証明することができることを確認している. 今後は, その仮定を弱めた場合, および指数安定性の度合い (収束速度) を決定する指数に関する情報についてさらなる考察を進める.
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