2016 Fiscal Year Annual Research Report
New Phase on Time Reversal Symmetry: The third generation MTV experiment
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16H03985
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
村田 次郎 立教大学, 理学部, 教授 (50360649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時間反転対称性の破れ / ベータ崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、TRIUMF研究所における原子核のベータ崩壊を用いた時間反転対称性の破れ探索実験(MTV実験)を高度化し、第三世代の実験として実施する事を目的としている。具体的には、TRIUMF研究所のISAC施設において生成した高偏極・大強度のLi-8核のビームを実験装置中心に設置したアルミ薄膜表面にて訂正させ、放出されるベータ線の横偏極度を測定する実験を行う。準備研究にて構築された、円筒型ドリフトチェンバーを基幹装置として用いた電子線横偏極度計をTRIUMF-ISACに設置し、高速デジタルデータ収集系を整備して高統計のデータ収集を行う。 最終的な実験精度を高める為、統計誤差と系統誤差双方の抑制が必要である。本研究では特に、ボトルネックとなる系統誤差の徹底的な調査と抑制研究を行った上で、本番データ収集を行う事としている。 平成28年度には、偶然同時計数に起因する偽の非対称性の混入経路をつきとめ、最初の物理データ収集を行う事に成功した。その際、系統効果評価の為に導入した専用の較正装置がフルに稼働し、結果的に理解を深める為に非常に役立った。得られた大量のデータは現在、解析中であるが、平成29年度に予定している最終的なデータ収集の最適化に向けた、知見が得られつつある。特に、偽の非対称性の起源をほぼ限定できた成果は大きく、最適化へ向けて大きく前進した。 時間反転対称性の破れに加えて、同じ電子線横偏極度の測定による、別の未検証の相関現象に本研究を応用し、実際にゼロでない効果を確認出来る見通しを立てる事も出来た。 平成29年度には、前年度に得られた知見を最大限に活かし、最適化されたデータ収集を完了させる。これにより、世界最高精度での時間反転対称性の破れの検証を行える見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的とした、第三世代のMTV実験は、当初の計画通りに最初のデータ収集に成功した。そのデータの中から、平成29年度に予定する本場データ収集におけるデータ収集方法の最適化の知見が得られ、世界最高精度に達する見込みを得る事が出来た。平成28年度は統計効果の理解が目的であったが、既に世界最高精度に迫る精度の物理データの収集にも同時に成功した。それのみならず、N相関と呼ばれる別の未検証の相関効果の観測方法も確立し、ゼロでない効果を初めて確認出来る見通しを立てる事も出来た。これらの成果は当初計画に比してむしろ前進しており、順調に進展していると自己評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に得られた統計精度向上、系統効果抑制の知見に基づき、最適化を行った上で第三世代MTV実験の最終的なデータ収集を行う。同時に、平成28年度に得られた物理データのデータ解析と成果公表、平成29年度の解析を進め、比較的早い段階での成果報告を行う予定である。これらの成果の上に立ち、第四世代の実験開発、提案へと発展させる研究を行う。
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