2018 Fiscal Year Annual Research Report
Design Study of Extended Hadron Experimental Hall
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16H03989
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田中 万博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (90171743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハドロン実験ホール / J-PARC / 二次ビームライン / 一次陽子ビームライン / 生成標的 / 大強度ビーム / 耐放射線磁石 / MIC |
Outline of Annual Research Achievements |
J-PARC ハドロン実験ホールの拡張計画は、現在の狭隘なJ-PARCハドロン実験施設を約3倍の面積に拡張するとともに、新たに2個の生成標的を設置し、二次ビームラインの数を増大させ、また実験アリアも十分に拡張し、世界最高水準の実験設備をも、余裕を持って設置可能とし、もって世界超一級の研究成果を量産しようという、大計画である。 本研究計画は、拡張されたハドロン実験ホールに設置されるビームラインやその周辺設備に関して、詳細な設計を行うことを目的とする。具体的には、拡張されたハドロンホールで展開される新しい物理に提供されるべき一次、二次ビームの強度、ビームの質、等についての定量的な検討を行うと同時に、研究者コミュニティーからの意見を反映しつつ、ビームライン設計の最適化を実施する。さらに建屋について土木的、建築的な観点からの検討も行い万全を期すものである。 平成30年度は、計画の3年目ということも有り、前年度に引き続き、各ビームライン(=それぞれの特色ある物理実験)における物理とビームラインの持つべき性能の検討を継続し、それと同時にKEK素粒子原子核研究所一次陽子ビームGによる一次陽子ビーム並びに標的、ビームダンプなどの設計検討とを結合させ、各ビームラインの設計検討を大いに具体化することができた。研究進行状況については、学会、研究会などで、施設全体を網羅する全体会合を持つとともに、学会(国際会議を含む)等で、設計・検討状況の発表を行い、内外の研究者コミュニティーからの幅広いフィードバックを求めた。 ビームラインの設計が順調に推移しつつあるので、いよいよ建物設計や実験基盤設備(受電設備や冷却水設備、あるいは巨視的な放射線遮蔽体)の検討や、周辺地形の測量などの建築、土木的な検討にも着手した。特に周辺の地形の比較的精細かつ広範囲の土木的測量を行い、工事費算定に関わる重要なデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、拡張されたハドロン実験ホールに設置されるビームラインやその周辺設備に関して、詳細な設計を行うことを目的とする。具体的には、拡張されたハドロンホールで展開される新しい物理に提供されるべき一次、二次ビームの強度、ビームの質、等についての定量的な検討を行うと同時に、研究者コミュニティーからの意見を反映しつつ、二次ビームライン設計の最適化を実施する。さらに建屋について土木的、建築的な観点からの検討も行い万全を期すものである。 三年目となる平成30年度においては、各二次ビームラインとそこで実施される特色ある物理実験の検討を積極的に推進した。同時にKEK素粒子原子核研究所一次陽子ビームGによる一次陽子ビーム並びに標的、ビームダンプなどの設計検討を結びつけ、各二次ビームラインの具体的な設計検討が、特にその上流部分において、大いに進展した。すなわち各二次ビームラインの設計は、いよいよ具体的に「建設可能」な段階にまで検討が進んだと言える状況となった。こういった設計の進展に伴い、学会、研究会などで、積極的に現状報告の場を設け、関係者と実会合をもち、顔をつきあわせた物理と設計の両面に渡る議論を行った。同時に、内外学会、国際会議などで途中経過の発表を積極的に行い、内外研究者コミュニティーからの幅広いフィードバックを求めた。 これらの努力の結果は、その初期のものが「白書=White Paper」という形で電子的にまとめられ閲覧に供されているが、その上に立って、平成30年度に学術会議が募集した次期大型計画に、コミュニティーを挙げる形で本計画の提案が行われた事は、我々の努力の方向の正しさを示す大きな証拠である。 なお、ビームラインの検討が順調に推移している事から、いよいよ土木・建築、基幹設備の検討を具体的に開始した。以上のような状況から、計画は概ね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの3年間で、上記のごとく物理研究を中心とした二次ビームラインと、一次陽子ビームラインの設計、検討が同時進行かつフィードバックを掛け合う形で推進できる体制が整えられ、また検討そのものも大いに進展した。これまでの成果は「白書」の形で取りまとめられると同時に、平成30年度に、日本学術会議が募集した「次期大型計画」への本拡張計画の応募が、順調に滞りなく行えたという、具体的な成果となって現れている。 平成31年度は最終年度であることから、上記検討をさらに進めるとともに、すでに開始することができた、建物、遮蔽体、基幹設備、さらにはビームダンプ移設を含む全体設計、全体工程の検討をもさらに推進する。これらの検討は主に一次ビームライン設計グループと、放射線安全の専門家、並びに施設建設の専門家によって成されるが、その結果は学会、研究会などを通じて、迅速に二次ビームライン、実験装置の検討グループにフィードバックされる。また検討経過の公表を国際会議、国際的な研究集会などを通じて積極的に行い、外国を含む研究者コミュニティーからの幅広いフィードバックを求め、全世界的な関心、需要の掘り起こしをも進めてゆく。 なお昨年度より、計画に係わる費用の積算をさらに精密化し、計画全体が経費的にも現実的な物となるようにも留意した検討を行っている。そのために受電や冷却水に関わる設備、さらには周辺の地形の測量を行い、土木に関わる経費の、比較的精度の良い積算が行える目処が立った。 先に述べたように、本拡張計画は、平成30年度に学術会議が募集した「学術に於ける大型計画」において、原子核研究者コミュニティーから「第一順位で推進すべき最重要計画」として応募が行われた。それ故、最終年度には、本計画を、物理的・技術的な観点のみならず、経費的な観点からも「より実現可能姓の高い計画」となるよう、取り纏めを行ってゆきたい。
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Remarks |
ハドロン実験施設の拡張計画に関する現状報告(白書、White Paper)の本文(和文)と英語(ダイジェスト)である。KEK-kdsシステム上に置かれており、パスワードを要求されるが、一端キャンセルボタンをクリックした後、画面上の表示に従って操作することによりパスワードを入手出来る(随時更新中)。 なお英語版は arXiv(arXiv.1706.07916 [nucl-ex]) に投稿された。
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Research Products
(13 results)