2016 Fiscal Year Annual Research Report
Relativistic effect on phonon and acoustic wave propagations
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16H04008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野瀬 佳文 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80436526)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 弾性波 / フォノン / 相対論効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、圧電体LiNbO3基板に強磁性体Niを積層させた人工マルチフェロイクス試料において、表面弾性波の非相反伝搬を観測することに成功した。この試料は、フォトリソグラフィーを用いて弾性波を発生・検出することが出来るすだれ状電極を二つLiNbO3結晶表面に取り付け、その間にスパッタにより強磁性金属のNiを蒸着することにより作成した。この試料を超伝導マグネット中で、ホモダイン検出法により詳細な弾性波伝搬の測定を行った。その結果、伝搬方向の正負で弾性波の透過強度や位相速度が異なる非相反性を確認した。弾性波の非相反性は、Al金属表面で低温高磁場中で電子のサイクロトロン共鳴によって誘起されたものが過去に観測されているが、磁性体においては初めての観測である。この非相反性の起源は、弾性波によるNiの強磁性共鳴励起であると推測し、これを確かめるために、対称性より求めた磁気弾性結合エネルギーの表式から弾性波によって誘起される実効磁場や磁気励起強度の波数方向依存性(非相反性)を導出し、これが実験結果と一致することを示して上記の推測を確認した。これらの結果をPhys.Rev.B誌に出版した。また、マルチフェロイクス物質BiFeO3において弾性波励起を確認することに成功した。産総研伊藤上級主任研究員作製の単結晶にすだれ状電極を蒸着し、サブマイクロ波の測定により弾性波励起を確認した。マルチフェロイクスにおける弾性波発生は、過去に報告がなく初めてのものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたLiNbO3/Ni二層デバイスにおける弾性波非相反伝搬やBiFeO3における弾性波発生を成功させることが出来たので上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
BiFeO3の詳細な磁場依存性などを測定し論文として発表する。六方晶マンガン酸化物など他のマルチフェロイクスにおける弾性波発生も試みる。また、フォノン誘起の熱ホール効果の探索も開始する。
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