2018 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄水素化物の新奇高温超伝導相の解明を目指した超高圧核磁気共鳴実験の開拓
Project/Area Number |
16H04013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椋田 秀和 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90323633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導 / 高圧 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
超高圧下の高温超伝導現象として、(1)ダイヤモンドアンビルを使ったNMR測定技術の開発および(2)鉄系や銅酸化物の高温超伝導体で興味もたれている圧力下の測定も並行して展開している。(1)に関しては、手始めにダイヤモンド間の大きな体積に重水(D2O)をつめた10GPa以下の低圧力を発生させたダイヤモンドアンビルとその周囲に巻いたNMRコイルで測定を行い、重水素2DのNMR信号の観測に成功した。現在より高圧域を目指してさらに小さな空間に試料を置き、様々な条件下およびセッティングを変えて最も信号の最大になる条件およびセッティングを探し、極微サイズの銅コイル、同等形状のタングステンコイルの方式も試した。ガスケットとして一般に使われるレニウムは、大きな電気四重極相互作用のためNMR測定には不向きであることがわかり、タングステンに変更した。(2)に関しては、インターカレートしたFeSeの圧力下での第2超伝導相の研究に向け、これまでに常圧下での試料評価と圧力下測定に向けた微小試料でのNMR測定を行っている。超高圧下での精密測定に向け、NMR測定の線幅に影響する不純物を磁石で取り除くことで共鳴線幅が大幅にシャープになることがわかり、準備が整ってきた。[1] 国際会議発表2件 (招待講演1件, ポスター講演2件) [2] 国内会議発表8件 (招待講演1件, 一般口頭講演8件, ポスター講演6件) [3] 学術論文(査読有り)2件 (原著論文1件、査読付きproceedings 1件)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のようにいろいろな新しい問題に直面しながらも1つずつ問題解決をし、着実に前進している。ダイヤモンドアンビルNMR法の開発は、最も強いNMR信号強度が期待される水素1H (プロトン)の低圧域での実験で複数のプロトンのNMR信号が観測できた。プロトンをできるだけ含まないプローブの素材への変更や配置の変更を行い、いくつか不純物のプロトンを特定した。重水素(2D)のNMRではそのようなことが問題とならないため、硫化重水素(D2S)の超高圧下2D-NMR実験も並行してスタートさせた。その実験でガスケットとして一般的に用いられているレニウムReは、核四重極相互作用が極端に大きく、紛らわしくも目的のD-NMR信号のところにサテライトピークをもつことがわかった。そこでガスケットをタングステンWに変更し、ダイヤモンドアンビルの中に類似物質である重水(D2O)の2D-NMR実験を行ったところ、微弱であるがきれいなNMR信号を検出することに成功した。さらに信号強度を強めるため、ダイヤ間に試料封入させるための金属板(ガスケット)の素材やNMRコイルの配置などをいろいろ変えながら測定し、試行錯誤しながら最適化の方法を検討した。 より感度を上げるため、試料空間に入るマイクロコイルの設置を試みたが、通常の金属で作ったコイルは測定中に切れてしまい、圧力をかけてもガスケットとの間で丈夫な固い金属タングステンを用いると、微小空間への設置、固定が著しく難しいことがわかった。 一方、FeSeのおよびインターカレートしたFeSeの圧力下での第2高温超伝導相の謎の解明に向け、これまでに常圧下での試料評価と圧力下測定に向けた微小試料でのNMR測定を行っている。NMR測定の線幅に影響する不純物を磁石で取り除くことに成功し、ピストンシリンダーでの圧力実験をステップにして超高圧下での精密測定ができる準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
超高圧下の高温超伝導現象として、(1)ダイヤモンドアンビルを使ったNMR測定技術の開発および(2)鉄系や銅酸化物の高温超伝導体で興味もたれている圧力下の測定も並行して展開している。鉄系高温超伝導に関しては、まずは第1超伝導相が出現している常圧下、次にそれが消失する3GPa、そして第2超伝導相が大きく成長する10GPa、と3つのステップで再出現超伝導相の電子状態に迫る。そのために、手慣れたピストンシリンダ型セルの実験を経て、新しい対抗アンビル型の圧力セルの実験へと進める。対抗アンビル型の圧力セルに関しては、扱いに慣れるための実験から開始する。また、銅酸化物で10GPaで153KまでTcが上昇するが、10GPa級で高温超伝導のTc向上因子を明らかにする。水素化物の超高圧実験は引き続きダイヤモンドアンビルとNMRコイルの相対位置を変え、現在より高圧域を目指してさらに小さな空間に試料を置き、様々な条件下およびセッティングを変えて最も信号の最大になる条件およびセッティングを割り出す。 線径8ミクロン、口径30ミクロンの極微サイズの銅コイル、同等形状のタングステンコイル、レンツレンズという方式と、渦巻き状のコイルの方式も試す。現有のクライオスタットでは、マグネットのボアが小さく、セルと外部磁場のセッティングに自由度がなくて難儀したので、圧力セルが自由に回転できるワイドボアマグネットの開発も並行して行っていく。
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[Presentation] A15型超伝導体V3SiのSi-NMRによる研究2019
Author(s)
野尻野旭, 森寛央, 川崎祐A, 岸本豊A, 中村浩一A, 小山岳秀B, 水戸毅B, 八島光晴C, 椋田秀和C, 小手川恒D, 菅原仁D
Organizer
日本物理学会 春季大会
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[Presentation] A15型超伝導体V3SiのSi-NMRによる研究2018
Author(s)
森寛央, 野尻野旭, 川崎祐A, 岸本豊A, 中村浩一A, 小山岳秀B, 水戸毅B, 八島光晴C, 椋田秀和C, 小手川恒D, 菅原仁D
Organizer
日本物理学会 秋季大会
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