2016 Fiscal Year Annual Research Report
レーザートンネルイオン化の理解に立脚した電子ダイナミクス可視化法の開拓
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16H04029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菱川 明栄 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (50262100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 亨 電気通信大学, 量子科学研究センター, 准教授 (20313405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強レーザー場 / トンネルイオン化 / 電子運動量分布 / 電子ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.静電場型電子―イオンコインシデンス計測系の構築:一対のディレイラインアノード位置敏感検出器(PSD)を備えた電子―イオンコインシデンス計測システムを設計,構築した。多段電極スタックによる一様な静電場と高速時間ーデジタル変換器(TDC)の採用によって,電子とイオンの両方について,全立体角にわたって歪みの少ない運動量計測を実現した。また,単一分子から生成したイオンー電子対をコインシデンス計測することで分子座標系における電子運動量分布の3次元計測を実現した。 2. 垂直運動量分布(TMD)の観測: 分子トンネルイオン化によって生成した電子の垂直運動量分布(TMD)を測定することを目的として, 電子―イオンコインシデンス計測に基づいて分子座標系での 3 次元光電子分布を調べた。標的分子は 重水素分子(D2)とし, 光電子分布に対する再衝突過程の影響を抑制するために紫外円偏光レーザー場(波長400 nm,強度3x10^14W/cm2)を用いて実験を行った。強レーザー場との相互作用で生成した光電子の運動量分布は分子座標系で明瞭なトーラス状の構造を示し,その断面から垂直運動量分布(TMD)の読み出しを行うことに成功した。理論グループは,静電場中でのトンネルイオン化の新しい理論を構築した。また,多電子系について,電場強度に関する漸近展開の高次補正項を定式化し,それをもとに最も基礎的な2電子原子系を対象に分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザートンネル イオン化過程のより厳密な理解と,分子内の電子ダイナミクスを直接可視化するための超高速反応イメージング法の開拓に向けて,新たに電子ーイオンコインシデンス運動量画像計測系の構築に成功し,TMD計測に成功した。また、静電場トンネルイオン化に関する新しい厳密理論を構築し、それをもとに基礎的な系について分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
トンネルイオン化で生成した電子と,(2) H2の 解離性イオン化(H2 → H2+ + e- → H+ + H + e-)によって生じたフラグメントH+とのコインシデンス運動量計測を行う。先行研究で観測された電子収量の異方性分布の検証を行い,これを踏まえて垂直運動量分布(TMD)に着目したデータ解析を行う。特にレーザー場の強度,パルス幅,波長,楕円偏光度を系統的に変化させて計測を行い,トンネルイオン化される H2 の 1σg 軌道の運動量空間波動関数とTMDの対応を調べる。断熱理論をリファレンスとして,実験条件がトンネルイオン化描像に適合しているか,またレーザー場による軌道の歪みや多電子効果について厳密な検証を行う。
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