2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms and Predictability of Coastal Ninos
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16H04047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山形 俊男 国立研究開発法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, ラボ所長 (50091400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気候変動 / 海洋物理・陸水学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、観測データ、大循環モデルによるシミュレーションと感度実験の結果、アンサンブル予測実験の結果を解析することにより、沿岸ニーニョ現象とその影響の詳細なメカニズムを明らかにするとともに、予測可能性を評価する。本年度に得られた研究成果は以下の通りである。 (1)水平解像度0.5度、鉛直25層の海洋大循環モデル(MOM3)を用いて、1948年から2012年までのシミュレーションを行い、ニンガルー・ニーニョ現象の発生海域における海洋混合層の熱収支解析を行なった。その結果、沿岸域では、南北移流項と海面熱フラックス項が重要な役割を果たしていたのに対し、外洋域では、後者のみが重要であった。(i)南北移流項:オーストラリア西岸沖に局所的な低気圧性の偏差を生じ、北風偏差が現れる。その結果、南向きに暖水を輸送するルーイン海流が強められ、正の海面水温偏差を増幅する。(ii)海面熱フラックス項:潜熱放出の減少と低密度水を移流するルーイン海流の強化に伴う成層の安定化により、混合層が平年よりも浅くなるため、短波放射によって温められやすくなり、正の海面水温偏差はさらに成長する。 (2)クロロフィル濃度の衛星観測データや高解像度海洋大循環生態系モデル(OFES-NPZD)の結果を解析することにより、ニンガルー・ニーニョ現象の際には、クロロフィル濃度が増大することが明らかになった。 (3)従来のモデルをアップデートした大気海洋結合モデル(SINTEX-F2)を用いて、2000年から2014年の各月1日を予測開始日とする6ヶ月先までの12メンバーのアンサンブル季節予測実験を実施し、沿岸ニーニョ現象の予測精度を評価した。その結果、ニンガルー・ニーニョ現象については、3ヶ月先までの予測に相関係数で0.15の改善が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大気海洋結合モデルによる季節予測については、次年度以降に予測精度の向上を目指すことになっていたが、今年度の研究で、既にニンガルー・ニーニョ現象については、予測精度の改善に成功した。また、メカニズム研究の方も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、主に海洋大循環モデルのシミュレーションにより、形成メカニズムを調べたが、今後は、大気海洋相互作用を調べるのにより効果的な大気海洋結合モデルのシミュレーションも用いて研究を進めていく予定である。また、季節予測の際に用いる初期値データの作成に海外研究協力者らが開発中のより高度な同化システムを利用することにより、沿岸ニーニョ現象の予測精度のさらなる改善に取り組む予定である。
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Research Products
(14 results)