2017 Fiscal Year Annual Research Report
全粒子モデル計算機実験による小スケール磁気圏の昼間側境界層物理の研究
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16H04058
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
臼井 英之 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (10243081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小型磁気圏 / プラズマ粒子シミュレーション / 速度分布関数 / 電子ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 水星や月面磁気異常上空で形成される「小スケール磁気圏」の昼間側境界層における太陽風の3次元運動論的応答とそれに起因する様々な波動粒子相互作用との関係を包括的に解明することである. 波動粒子相互作用の解析を行う上で、対象領域でのプラズマ粒子の速度分布関数は非常に重要である。本年度は, 全粒子モデル計算機実験で得られた定常場を基に, Liouville定理に基づくBacktracking法のテスト粒子計算により,観測点の速度位相空間上の各点から多数の粒子を逆追跡して観測点での粒子速度分布関数を求める新しいテスト粒子計算手法の開発を行った。その後、月面上の局所磁気異常領域と太陽風プラズマとの相互作用によって形成される小型磁気圏に関する3次元プラズマ粒子シミュレーションを実施し、それによって得られる磁気異常上空での電磁場データを用いて、磁気圏昼間側境界層におけるプラズマ速度分布関数を取得することができた。特に、マグネトポーズと太陽風中の2つの領域におけるプラズマ速度分布関数を取得し比較することにより、赤道面のマグネトポーズにおける電子の強い流れやイオンの太陽方向への反射を速度分布関数の観点から定量的に把握することができた。地球磁気圏の場合と違い、磁気圏形成において太陽風のイオンや電子のジャイロ半径や慣性長が無視できない。このため、特にマグネトポーズにおける速度分布関数では、太陽風プラズマのサイクロトロン運動などの運動論的効果の影響が大きく出ることにより非熱的成分が生成されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高精度粒子速度分布関数解析ルーチン作成においてテストを実施していたところ、当初の想定に反し、正確な速度分布関数の計算ができていないことが判明したため、解析ルーチン手法を変更した上で、再度テスト計算を行う必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高精度粒子速度分布関数解析ルーチンについての新手法のテストを引き続き行うとともに、小型磁気圏境界層での非熱的な成分を持つプラズマ速度分布関数と波動発生の因果関係の解析を実施する。境界層領域の粒子速度分布関数とプラズマ波動との関係を明らかにするために、各プラズマ粒子速度分布関数を初期条件とした1次元の小規模計算機実験を実行し、各領域におけるプラズマ不安定性現象を再現する。これにより、小型磁気圏昼間側境界層での波動粒子相互作用現象の基礎的な解析を進める。 並行して、弱磁場小型天体と太陽風との相互作用に関する粒子シミュレーションを開始する。具体的には、天体固有磁場の磁気ダイポール中心から磁気圧と太陽風動圧が釣り合う点までの距離をDpとし、太陽風イオン慣性長Liする場合、まずは、Dp/Li=1となる磁気を持つ球体を設定し、南向きIMFをもつ太陽風との相互作用に着目する。これにより、小型磁気圏形成や特に昼間側マグネトポーズでの太陽風プラズマダイナミクスの詳細解析を行う。
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Research Products
(26 results)