2016 Fiscal Year Annual Research Report
熱水摩擦実験に基づくスロー地震発生の物理化学プロセスの解明
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16H04064
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 丈洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (40470124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スロー地震 / 熱水 / 摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯で発生するスロー地震には、水が深く関与していると考えられている。しかし、スロー地震の物理的発生メカニズムはまだよくわかっていない。本研究では、間隙水圧比(静岩圧に対する水圧の割合)がスロー地震の発生と密接に関わっているという仮説を、地震発生域の熱水環境を再現した低~高速すべり摩擦実験によって検証したい。特に、「断層の摩擦特性が間隙水圧比の変動によってどのように変化するのか」ということを詳細に調べて、物質学的視点からスロー地震の発生機構の解明を目指したい。
平成28年度は、株式会社マルイの技術者の協力のもと、平成27年度までに作製した熱水圧力容器の、軸載荷と回転載荷部の設計・開発をおこない、年度末に無事「回転式熱水摩擦試験」として納品設置することができた。そして、すべり速度20nm/s~2m/s、軸載荷50kN、水圧100MPa、温度400℃の条件を再現できることを確認した。ただ、回転部の軸ブレ、電気系統のノイズ問題など調整が必要な箇所がいくつかあり、引き続き調整を行っていく予定である。また、実験に用いる予定である、四国三波川帯の最高被熱温度が300~350℃の変成部に露出している緑色片岩と泥質片岩を採取し、X線回折および光学顕微鏡下で鉱物同定をおこなった。さらに、国際深海科学掘削計画(IODP)第370航海(室戸沖生命限界掘削調査)に乗船参加し、沈み込み帯浅部のスロー地震発生行に実際存在する付加体内部の泥質岩を採取した。これらの岩石等を用いて平成29年度以降に実験をおこなっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スロー地震の震源域では、プレート固着域浅部で100~150℃、プレート固着域深部で350~450℃の高温間隙水が存在すると考えられる。しかし、このような熱水条件下での低~高速実験はこれまで行うことができなかった。平成27年度に納品設置した回転式熱水摩擦試験機は、まさにこのようなスロー地震発生場の条件を再現できる世界で屈指の試験機である。また、実験に用いる沈み込み帯スロー地震発生場に実際存在する岩石の採取も完了している。今後、試験機の調整と実験試料を試験機に入れ込むためのプレス機の作製は必要だが、おおむね研究は計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
回転式熱水摩擦試験機の調整をさらに進め、スロー地震を実験室で再現することで、スロー地震発生の物理・化学プロセスの解明を目指したい。特に調整後、精度の良い実験ができるような状態になった際には、間隙水圧と間隙水圧比がどのようにスロー地震発生の断層の摩擦特性に影響を及ぼすのかを詳細に調べたい。
熱水圧力容器は第一種圧力容器として労働監督基準署から認可を受けているが、設置届・落成検査を受けるには至っていない。特殊な試験機であるため、設置している圧力安全弁などが所轄労働基準監督署で認可されるかまだ不透明である。法律に遵守すべく粛々と手続きを進めていきたい。
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