2017 Fiscal Year Annual Research Report
気候ジャンプ時における海水温の季節変動幅の時系列変動と大陸氷床形成のタイミング
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16H04070
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
守屋 和佳 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60447662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (60332475)
石村 豊穂 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (80422012)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有孔虫 / 炭素・酸素同位体比 / 古水温 / 始新世/漸新世境界 / 古海洋 / 氷床 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,以下の3つのWorking Packages(WP)について,解析に用いるための試料の洗浄・化石や有機分子の抽出などの前処理行程を中心に実施した. WP1:浮遊性有孔虫化石1個体ごとの分析による海水温の季節変動幅の算出:平成28年度の実施において洗浄された堆積物から,Globoturborotalita marutini,およびG. ouachitaensisを抽出した.抽出した個体について,実体顕微鏡,および電子顕微鏡下で殻の保存を確認し,有孔虫1個体ごとの炭素・酸素同位体比測定を行った.1つの試料(層準)内から抽出された有孔虫化石を1個体ごとに分析する際に,妥当な平均的値を得るために必要な分析個体数の検討を行った.1試料から20から30個体を抽出し,各個体について炭素・酸素同位体比を決定し,累積平均と累積標準偏差を算出したところ,10個体程度以上分析すれば30個体分析した結果と同一とみなせる値を得ることできた. WP2:TEX86分析による始新世/漸新世境界を通じた平均海水温の算出:平成28年度までの実施で,110試料からの有機分子抽出を行った.これらの有機分子をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分画し,極性画分を得た.このうち,代表的な試料について,高速液体クロマトグラフィーを行ったところ,十分に目的分子が含まれていることが確認された. WP3:海水の酸素同位体比の算出に基づく,始新世/漸新世境界における氷床発達過程の推定:WP1の分析から得られた浮遊性有孔虫の酸素同位体比の平均値から,始新世後期の北大西洋ニューファンドランド沖の海水温を算出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,浮遊性有孔虫化石1個体ごとの炭素・酸素同位体比分析を行い,1試料(層準)における平均的な値を得るために必要な分析個体数の算出と,堆積物から抽出された有機分子の分画と高速液体クロマトグラフィーで有機分子組成の予察分析を予定していた. 有孔虫化石の分析については,計画通りに実施することができ,分析のために必要な個体数の算出を行うことができた.一方,有機分子の分画と有機分子組成の予察分析については,当初の予定通りに分析環境の整備が整わず,この作業の一部について遅延が発生した.しかし,その後,予定していた分析環境が整い,有機分子の分画と有機分子組成の予察分析を完了することができた. ここまでの工程において,平成30年度に予定している浮遊性有孔虫化石1個体ごとの分析に基づく海水温の季節変動幅の解析と,TEX86による平均的海水温の変動解析の準備が整ったため,計画通り平成30年度以降にこれらの解析を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの研究において,北大西洋高緯度地域における始新世/漸新世境界時の海水温変動の解析準備が整った.これらの知見に基づき,平成30年度以降は浮遊性有孔虫化石1個体ごとの分析を,複数試料(層準)について行い,海水温の季節変動幅の経時変動を議論する.また,始新世/漸新世境界時には,大規模な南極氷床が形成されたと考えられており,それによる海水の酸素同位体比の変動があったことが議論されている.そこで,海水温酸素同位体比の変動の影響を受けずに平均的海水温の算出が可能なTEX86指標も用いることで,平均海水温と海水温の季節変動幅の経時変動を総合的に解析することを目指す.
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Research Products
(5 results)