2016 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative evaluation of ionization, recombination and cooling rate of tungsten for transport study and density analysis
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16H04088
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
森田 繁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80174423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 鉄太郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80442523)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ核融合 / タングステン / プラズマ分光 / EUV分光 / 疑似連続光 / 放射損失 / 電離・再結合 / 原子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年2月初旬から軽水素を用いたLHD実験を開始し,3月初旬からは重水素実験を実施し始めた.重水素実験で発生する中性子影響を軽減する為,分光器の真空排気制御システムを地下へ移動した.また,分光器の制御システムには中性子遮蔽版を設置した.基本的に週に1回しかLHD実験室に入室できないため,タングステンペレットを入射する不純物ペレット入射装置を改造した.これにより,1回に装填できるペレット数が100個から250個に増加し,効率的なペレット入射実験が可能になった.これら作業の結果,少なくとも3月までの重水素実験(60keV正イオン源NBIのみ重水素化)では,タングステンペレット入射及びそのスペクトル観測を順調に実施することができた. タングステンスペクトルを高精度で観測するためには,NBIの高速イオンを起源とする高速中性粒子の分光器への侵入によるスパイク状信号雑音の低減が重要となる.空間分布計測用EUV分光を改造し,0.5μm厚ポリエチレンフィルターを設置した. 重水素実験では負イオンNBI加熱入力が減少するので,低融点・短侵入長のポリエチレンと高融点・長侵入長の黒鉛ペレットを入射し,重水素放電とペレット入射応答を調べた.その結果,両ペレット共,実験に利用できることが判明した.無事にタングステンペレットを入射でき,スペクトルを観測した.実験には連携研究者も適宜参加した. 中国・等離子体物理研究所のEAST装置では,タングステンスペクトルの空間分布を計測するために,空間分解型EUV分光器の設置準備を進めた.平成29年1月に同研究に滞在し,分光器の設置を完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LHD実験は平成28年度から中性子発生を伴う重水素放電となる.そこで,平成28年度はEUV分光器システムの中性子及びそれに伴うγ線対策を重点的に行った.まずは,分光器真空排気制御システムをLHD実験室地下へ移設し,分光器自身の制御システムに中性遮蔽を施した.重水素実験用に改良したシステムを用いて平成29年3月に行われた重水素放電の分光計測を開始した.真空排気及び分光器の制御システムに大きな問題はなく,不純物スペクトルを無事観測することができた.また,不純物ペレット入射装置も分光器システムと同様,重水素放電に向け改良を施した.その結果,タングステンペレットを成功裏に重水素放電に入射することができ,同時にEUVタングステンスペクトルを取得した.重水素ビーム化された正イオンNBI入射に起因する中性子によるCCD検出器への雑音影響もさほど大きなものではなく,分光計測を平成28年度終了まで無事継続することができた.この結果,タングステンのUTAと呼ばれる疑似連続光の空間分布のみならず,低電離タングステンスペクトルや可視域禁制線(例えば磁気双極子禁制線)の観測に成功した.分光器の絶対感度較正を済ませ,空間分布の磁気面座標への再構成,HULLACコードによる放射強度計算を経て,UTAスペクトルを用いたタングステンイオン密度の算出への見通しが確かなものとなった.また,タングステンの放射係数の定量的評価に向け,準備を進めた. 中国・合肥・等離子体物理研究所のタングステンダイバータ超伝導トカマク装置「EAST」で,上側X点及び下側X点ダイバータ放電にてタングステンスペクトルを観測した.その結果,低域混成波(LHCD)を入射すると,タングステンの不純物蓄積が抑制されることを見出した.タングステンイオン密度の導出に向け,空間分布計測用EUV分光器の設置を完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は主に重水素実験に向けての装置改良に力を注いだ.その結果,無事,重水素放電でタングステンペレットを入射し,タングステンスペクトルを首尾よく観測できた.平成29年度には,8月初旬まで行われるLHD実験で,不純物ペレットを用いたタングステン分光計測を平成28年度に引き続き継続する.タングステンスペクトルの空間分布計測に重点を置く.5月からは高エネルギー(200keV程度)負イオン源NBIの重水素ビーム化が進む,これまでの低エネルギー(60-80keV)正イオン源NBI重水素ビームと比較して,中性発生量が1桁から2桁増加すると予測されている.5-6月の2か月間,高中性子発生放電が継続する.万が一,中性子によるCCD検出器やコンピュータへの損傷が甚大になると判断した場合には,この間,CCD検出器とコンピュータをLHD装置から遠ざけ,7月から予定されている軽水素放電での分光計測に備える.タングステンペレットを用いた3回の分光計測実験が7月に予定されている.NBIも重水素ビームから軽水素ビームに切り替えられるので,7月以降のLHD放電は原則的に中性子発生を伴わない.7月にタングステンに関するデータを取得し,UTA放射を用いたイオン密度解析,EUV領域に存在する全タングステンスペクトル観測による放射係数の解析を開始する. 中国・合肥の等離子体物理研究所のEASTトカマクでは,空間分布計測を本格化させ,LHD実験での知見を基に,W44+及びW45+スペクトルを用いたイオン密度評価を実施する.タングステンの輸送解析に向け,コードの整備を進める.同時に,上側及び下側ダイバータ運転におけるタングステン挙動についてEASTの分光研究者と共同で解析を始める.
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Remarks |
平成26年11月9日から2月5日までの約3か月間,連携研究者(黄賢礼)をドイツ・グライフスバルド・マックスプランク研究所に派遣し,W7-X装置でのタングステン分光に関する共同研究を実施した.不純物診断にはEUV分光器の絶対スペクトル強度較正が不可欠であり,EUV光源を用いて,W7-Xで使用予定のEUV分光器の絶対較正実験を共同研究として行った.
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