2018 Fiscal Year Annual Research Report
Spatio-temporal coherent control of excited states in metal nanostructures and its application to control of light propagation
Project/Area Number |
16H04100
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井村 考平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80342632)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金ナノ構造体 / コヒーレント制御 / 励起状態 / エネルギー伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では,気相において成熟したコヒーレント制御技術をナノ物質系に導入し,さらにこれに光励起状態の可視化法を融合させることで時空間コヒーレント制御を実現することを目的している。平成30年度は,さまざまな金属ナノプレートにおける時空間コヒーレントを実現することを当初の目的とした。これまでに,金プレートを用いた時間分解計測を実現し,その解析から励起されるプラズモンにはプレート面内に分極したモードと面外に分極したモードがあることを明らかにしている。また面外モードは,面内モードと比べて強い光閉じ込め効果を示すことが明らかとなっている。プラズモン波のコヒーレント制御を実現する上では,プラズモンの位相緩和についての知見を蓄積することは極めて重要である。当該年度の前半は,面外モードと面内モードの寿命を解明する方法として,あらたに3次元近接場可視化法を確立した。この手法を用いて金ナノプレートに励起される複数のモードを可視化した結果,面外モードが面内モードより長寿命であることが明らかとなった。この結果は,これまでの時間分解特性の観測結果とも整合することから,コヒーレント制御には面外モードが有用であることが明らかとなった。当該年度は,光励起エネルギーの伝播現象の可視化とその制御に向けた研究も進めた。金属ナノ構造体では,プラズモン失活後の励起エネルギーが電子温度に変換され,これがバリスティック伝導する。光励起エネルギーの可視化と制御を実現するためには,光励起後の電子温度の空間分布を可視化が不可欠である。これまでにポンププローブ法を用いた計測や屈折率変化を利用した計測を開発してきたが,感度に向上の余地があった。本年度は感度向上を目指して,発光計測を利用した温度計測法を開発した。今後これを利用した熱空間分布の可視化・制御に取り組む計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,金属ナノ構造体に誘起される光励起状態の制御を実現し,光と熱の伝播制御法を構築することを目的とした。また,励起状態の長寿命化,エネルギー伝播の動的可視化を実現し,光と物質の相互作用における理解を格段に深化させることを目的とした。二次元ナノ構造体である金属ナノプレートを用いた研究から,プレートに励起される空間構造が二次元ポテンシャル内の粒子の固有モードを用いて完全に説明することができることを明らかにした。計算で得られる固有モードは,物質特性によらず形状にのみ依存して変化する。つまり,本研究で明らかにした固有状態とその理解は,非常に一般性が高く,すべての物質系の理解に拡張可能である。また,ナノ物質の固有状態を対称性に基づいて分類することで,その分光特性を理解できることを明らかにした。さらに,プレートには,対称性の異なる面内に分極するモードと面外に分極するモードがあり,面外モードを励起することで励起状態の長寿命化が実現することを明らかにした。熱伝播過程の可視化では,あらたに金属からの一光子および二光子発光計測により,電子温度の測定が可能なこと,ナノ粒子の散乱スペクトルや蛍光色素の寿命変化から格子温度計測が実現することを明らかにした。後者の蛍光色素の寿命計測からは,熱源からの熱伝播挙動を可視化できることを明らかにした。以上のとおり当初の研究目標を概ね達成するとともに,当初の計画以上の成果を得るに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,これまでに蓄積してきたプレートプラズモンに関する知見を活用し,二次元ナノ構造体における高度な時空間コヒーレント制御とエネルギー伝達制御を達成することを目標とする。エネルギーの伝達制御では,光場制御によりナノ物質に特定の固有モードを選択励起し,隣接するナノ物質へのエネルギー伝達の効率と方向を近接場相互作用により制御することを検討する。また,本研究ではプラズモン失活後のバリスティック熱伝導機構を詳細に明らかにすることを目的としている。これを実現するために,これまで進めてきた近接場光熱イメージング法の高度化をさらに進める。これにより,熱伝播挙動と試料内部に誘起される光励起状態の空間分布との相関を究明する。これらの計測からバリスティック熱伝導を制御する要因を解明し,その制御法を確立する。以上の二つの制御の実現に向けて,今年度も当初の研究計画にしたがい研究を推進する計画である。
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Research Products
(19 results)