2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04104
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
江原 正博 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複雑量子状態 / ナノ・バイオ系 / 強相関電子系 / 電子共鳴状態 / 電子移動励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、複雑な量子状態である強相系や共鳴状態を精密に記述する新しい基礎理論の開発を行い、ナノ・バイオ系、とくに不均一触媒系や光機能系の微視的メカニズムを電子状態理論によって解明し、その知見に基づいて、新しいナノ・バイオ系の量子システムの設計・制御することを目的としている。H28年度は、実施計画で挙げた研究課題について下記の研究成果を得た。 (1)合金微粒子の複雑電子状態および凝縮相高分子との界面の理論解析では、凝縮相高分子PVPと微粒子の界面現象やAu-Pd合金微粒子が示すカップリング反応について検討し、合金効果と凝縮相高分子の効果、界面のダイナミクスを明らかにした。(2)大規模系強相関理論の開発と応用では、アルミナに担持したコバルト微粒子や高分散した単一原子触媒について金属原子をスクリーニングすることにより担体効果と界面の効果について検討した。特に単一金属原子触媒では理論的にNiが高活性である提案を行った。(3)大規模系電子共鳴状態の理論開発では、複素吸収ポテンシャルの方法(CAP)をDNA・RNAとその誘導体およびCN基をもつ分子群に適用し、最低エネルギーの状態だけでなく、高いエネルギー領域の電子共鳴状態を計算することに成功した。(4)励起状態と化学反応における圧力効果の研究では、C60フラーレンとシクロペンタジエンのDiels-Alder反応に独自のPCM XP理論を適用し、極限高圧下でエネルギーバリアが消失することを示し、圧力効果の詳細な解析を実施した。(5)電子移動励起の化学指標の研究では、励起状態におけるプロトン移動反応について検討した。励起状態における精密なプロトン移動のポテンシャル曲面を計算し、プロトン移動と化学指標との相関に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で当初計画していた複雑な量子状態である強相関電子系や電子共鳴状態の理論開発は順調に進展しており、ナノ・バイオ系、とくに不均一系触媒、電子付加状態、光機能系への適用も実施できている。各研究課題の具体的な進捗状況は以下のとおりである。 課題(1)では、合金微粒子の構造、電子状態、界面における反応機構の解明に加えて、分子シミュレーションによる界面の吸着ダイナミクスを明らかにすることができた。課題(2)では、理論開発に先行して、強相関系である金属酸化物に担持された金属クラスターや金属原子の電子状態を明らかにすることができ、特に後者ではII価の金属をドープすることが重要であるという一般的な知見を示すことができた。課題(3)では、これまで開発してきたCAP/SAC-CI理論に、新規に開発したポテンシャルを用いることによって、世界最大級の大規模な分子系の電子共鳴状態を計算することに成功した。課題(4)では、独自のPCM XP理論を用いて、これまでにない大きさの反応系における圧力効果の詳細を明らかにできた。課題(5)では、光誘起プロトン移動における化学指標の変化に注目し、新しい化学指標の可能性を示すことができた。 これらの研究では、研究計画を立案時以上の研究成果が出ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題をさらに進展させ、理論開発を進展させ、様々な化学事象に適用するとともに、応用研究からフィードバックし、より有用性の高い理論の開発を実施する。また、当初計画した研究課題を推進していく。具体的には、課題(1)では、銅-金属合金微粒子における構造と電子状態の相関、アルミナに坦持されたPt-Co合金の構造と反応性、新しい合金触媒の反応機構、金属微粒子が融合する過程の自由エネルギー解析などの研究を行う。課題(2)では、不均一系触媒の様々な触媒反応の研究するとともに、固体表面触媒を精密に記述できる理論の開発を実施する。課題(3)では、これまで中心的に開発してきたCAP/SAC-CI理論に加えて、外挿法であるACCC SAC-CI理論の開発を行い、様々なポテンシャルの精査を行い、信頼性の高い方法を確立する。課題(4)では、XP PCM法を基底状態や励起状態の反応に系統的に適用する。課題(5)では、電子移動の化学指標を複雑な形状を有する分子や金属錯体・複合体になどにも適用できるように一般化する。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Multi-step Intersystem Crossing Pathways in Cinnamate-Based UV-B Sunscreens2016
Author(s)
K. Yamazaki, Y. Miyazaki, Y. Harabuchi, T. Taketsugu, S. Maeda, Y. Inokuchi, S. Kinoshita, M. Sumida, Y. Onitsuka, H. Kohguchi, M. Ehara, T. Ebata
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Journal Title
J. Phys. Chem. Lett.
Volume: 7
Pages: 4001-4007
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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