2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H04106
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機化学 / 光物性 / 構造制御 / 開殻分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎科学的ならびに応用的観点から、開殻π電子共役系有機化合物は近年急速に注目を集めている。しかしながら、開殻系分子が安定に単離され、その性質が研究された例は未だ少ない。われわれは、「炭素架橋による分子構造制御」という独創的な手法に基づき、強固な共平面構造をもつ炭素架橋オリゴフェニレンビニレン(COPV)を開発し、速度論的ならびに熱力学的安定化効果によって、キノイド型化合物や開殻種が安定に単離できることを見出した。今年度特筆すべき成果として、高精度計算を用いたキノイド型化合物の励起状態に関する新たな知見と、キノイド-ベンゼノイド構造の双安定性に基づく興味深い現象について報告する。 以前に合成した、COPV1およびCOPV2(それぞれ、炭素架橋スチルベンおよびスチリルスチルベンに相当)の末端にジシアノメチレン基を有するキノイド型化合物であるQM1CNおよびQM2CNはそれぞれ578-744nm、769-1102nmの近赤外領域に吸収帯を示すことが実験的に知られている。高精度計算によってこれらは禁制のS0-S1遷移と許容のS0-S2遷移の吸収帯の重ね合わせであることが明らかとなった。 また、QM1CNの溶液を低温(140K)にするとσ-ダイマーが形成されることが観測された。これは、キノイド型構造をもつQM1CNモノマーが二量化することで、分子内のキノジメタン部位がベンゼノイド型になることでエネルギー的に安定化するためであると考えられる。一方で、QM2CNではこのような二量化は観測されなかった。これは、QM2CNモノマーが既にベンゼノイド型を示すために、エントロピー的に不利な二量化が起こらないためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強固な完全平面型構造をもつCOPVをプラットフォームとして用いることで得られた安定なキノイド型化合物およびジラジカル性化合物に関する実験と理論を用いた研究により、電子状態やキノイド-ベンゼノイド構造の双安定性に関する理解が深まり、これらの知見を生かした新たな展開が期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
強固な完全平面構造によって、効果的なπ共役の拡張効果と大きな電子的カップリングを有するCOPVプラットフォームを用いて、結合を介した電子的カップリングについての基礎的知見は集積されつつある。今後は、これらの知見を生かした展開と、空間を介した相互作用についての基礎的知見の収集を行いたい。前者については、昨年度得られた知見である、キノイド-ベンゼノイド構造の双安定性を利用した閉殻-開殻スイッチングや、これを用いて電子スピンを非局在化するための分子設計、さらにはNLOなどの光学的応用への展開を行う。後者については、para-シクロファンを含む分子を合成し、各種スペクトル測定によって空間を介した相互作用について研究を進める計画である。
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