2016 Fiscal Year Annual Research Report
動的面不斉を有する中員環分子の設計，光学活性体の調製，及びその応用
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16H04113
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| Research Institution | Kyushu University |
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Principal Investigator |
友岡 克彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (70207629)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 有機合成化学 / 分子キラリティー / 動的面不斉分子 / 機能性キラル分子 / 不斉合成 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は，動的面不斉を有する中員環分子という特殊なキラル分子に関して，基礎から応用に渡る系統的な研究を実施し，その学理探求を目指すものである．その中にあって本年度は，望みの立体化学的安定性と官能基を有する動的面不斉分子の合理的設計法の開発を目指して，中員環分子の構造と立体化学的安定性の相関について精査した．その結果，環構成ヘテロ原子について，酸素と窒素の顕著な差異を明らかにするとともに，窒素上置換基がおよぼす効果についても系統的な知見を得た．さらに，E-アルケンC3位に置換基を導入すると面不斉の立体化学が安定化されることを，一方，C4位に置換基を導入すると立体化学的に不安定化されることを明らかにした．これにより適切な置換基をC3位もしくはC4位に導入することで準静的～動的な面不斉分子を柔軟に設計できるようになった．また，計算化学的手法でラセミ化の遷移状態を求め，面不斉の安定性を高精度に予測することにも成功した．これらの手法で設計した中員環分子の合成法として，今回，新たに閉環メタセシス法によってZ-アルケン誘導体を調製した後に，硝酸銀-シリカゲルの共存下にアルケンのZ→E光異性化を行う新手法を開発した．これと既存の合成法を適切に選択することで多様な面不斉分子の効率的合成が可能になった．さらに，動的面不斉分子を光学活性体として得るために，不斉環化法の適用範囲拡大および，新手法の開発を検討した．さらに，動的面不斉分子の特性を活用した機能性キラル分子の創製を目指して，種々検討し，面不斉アミノ酸とそれを集積した面不斉ペプチドの開発に成功した．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
動的面不斉を有する中員環分子の構造と立体化学的安定性の相関について多くの知見を得た．環構成ヘテロ原子として酸素もしくは各種窒素官能基を導入したオルトシクロフェン型中員環分子の立体化学的安定性を比較し，また計算化学的解析を行うことで炭素－ヘテロ原子結合の結合長，アルケンとの軌道相互作用がおよぼす効果を明らかにした．さらにE-アルケンのC3位もしくはC4位に置換基を導入した複数の中員環分子の立体化学的安定性を比較した結果，置換基の位置によって立体化学的安定性に顕著な差異が生じることを見出した．またそれがラセミ化の遷移状態における環反転の方向が切り替わることに起因しているという考えを提唱した．これらの研究により，望みの立体化学的安定性を有する面不斉分子の設計指針が明確になった．本研究ではまた，動的面不斉分子の合成法に関して，閉環メタセシス法によってZアルケン誘導体を調製した後に，アルケンのZ→E光異性化を行う新手法を開発した．これと既存の合成法を適切に選択することで多様な面不斉分子の効率的合成が可能になった．さらに，動的面不斉分子を光学活性体として得るための調製法，機能性キラル分子としての応用についても検討し，顕著な成果を得た．
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究では，中員環分子の面不斉現象に関する基礎化学を精査，体系化してその学理を探求することを目指している．次にそれに立脚した応用展開を図る．その中にあって今後は，昨年度からの課題である「望みの立体化学的安定性と官能基を有する動的面不斉分子の設計とその合成」について引き続き検討する．既に分子の構成元素や環上置換基などの「分子の内的因子」が面不斉現象に及ぼす影響を合理的に理解し，また，計算化学的に予測することに成功しているので，それに基づいて，望みの立体化学的挙動と望みの官能基を併せ持つ動的面不斉分子の自在設計・合成の実現を目指す．次に「分子の外的因子」による面不斉現象の制御を目指して，分子内に複数のヘテロ置換基を導入した動的面不斉分子を設計，合成し，Lewis酸などの外的因子の添加による立体化学挙動変化を精査する．また今後は，「動的面不斉分子の光学活性体調製法の開発」についてさらに研究を進める．「立体化学的に安定な動的面不斉分子の光学活性体調製法」については，既に，エナンチオ選択的不斉環化法の開発に成功したので，今後は，アキラルな環状アルキンをキラルな環状アルケンに変換する際にエナンチオ制御するという新型不斉合成法の開発を目指す．また，「立体化学的に不安定な面不斉中員環分子の光学活性体調製法」の開発にも注力する計画である．さらに動的面不斉分子の特性を活用した機能性キラル分子の創製について，面不斉アミノ酸・面不斉ペプチドの研究を発展させるとともに，不斉反応剤，光・電子機能分子などとしての応用展開を図る．
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Research Products
(13 results)
