2016 Fiscal Year Annual Research Report
クラスター錯体によるエネルギーキャリアのテーラーメイド合成
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16H04125
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
正岡 重行 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (20404048)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラスター錯体 / 酸化還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
風力や太陽光など,安定供給に難のある再生可能エネルギーを有効に利用するため,電気化学エネルギーを化学エネルギーに効率よく変換できる多電子酸化還元触媒の開発が求められている。そこで本研究では,生体酵素の活性中心をヒントに,①多電子プール能,②フレキシブル骨格,③配位不飽和サイトの3つの特徴を併せ持つクラスター錯体を研究開発の中心に据え,触媒開発のための基礎研究を推進した。平成28年度は,鉄,マンガン,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ルテニウム,オスミウムなどの金属イオンを含む多様なクラスター錯体の合成,電子状態評価ならびに触媒機能評価を試みた。合成したクラスター錯体の構造および電子状態の解明には,単結晶X線構造解析,ESI-TOF-MS,1H-ならびに13C-NMR,紫外可視吸収分光,電気化学測定,メスバウアー分光を用いた。また,触媒機能を評価するに当たっては,電気化学的手法による酸化還元もしくは化学試薬を用いた酸化還元を触媒反応の駆動力として用いた。また,上記の金属イオンの種類を変更する研究プロジェクトと並行し,配位子部位の化学修飾による触媒機能の向上を目指したプロジェクトにも取り組んだ。電子供与性や電子吸引性の置換基やプロトン解離サイトを導入した新規配位子を合成し,次いでその配位子を用いた鉄系クラスター錯体の合成を行った。とりわけ,プロトン解離サイトを導入した配位子を用いた鉄系クラスター錯体は,プロトン解離サイトを導入していない配位子を用いたクラスター錯体と比較して大幅な過電圧の低下がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一部の化合物について,高純度の化合物を大量に合成することができず,電気化学測定を行うための十分な量の試料を得ることができなかった。結果として,当初の計画に比べ研究の遂行が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き,多種のクラスター錯体の合成,結晶構造の解明,小分子の多電子酸化還元に対する触媒機能の評価を行う。また,研究の進捗に応じて,触媒構造の最適化を行う。
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