2017 Fiscal Year Annual Research Report
柔粘性イオン結晶が拓く分子性強誘電結晶開発の新展開:結晶配向と分極方向の自在制御
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16H04126
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 潤 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00313172)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子性固体 |
Outline of Annual Research Achievements |
強誘電体とは,電気双極子が整列してマクロな分極が保持され(自発分極),ある閾値(抗電場)以上の外部電場を印加することで分極の向きを反転できる物質である.このスイッチ可能な自発分極は,不揮発性メモリーなどに応用可能で,また,焦電性(温度変化で分極の大きさが変化),圧電性(加圧で分極の大きさが変化)を活かした赤外線(熱)センサー,圧電(ピエゾ)素子などの実用例が数多く存在する. 近年,分子性強誘電結晶の開発が盛んに行われているが,有機結晶を基板上に配向制御して成長させることは極めて困難であり,このことが研究発展において致命的な障害となっていた.本研究では,分子性イオンからなる柔粘性結晶で強誘電性を示す化合物を開発すれば,その結晶が電場印加により配向と強誘電性の分極方向を自由に変更可能であることを示す.この新しいタイプの強誘電結晶は,結晶化時の配向制御は不要であり,また,加圧による伸展性も併せ持つため,従来の強誘電結晶では不可能であった有機電子デバイスなどへの展開が大いに期待できる. 平成29年度は,正四面体型構造を持ち,無極性の有機カチオンとアニオンからなる様々な有機イオン結晶を作製した.それによって,室温でカチオン分子とアニオン分子の変位に由来する強誘電性を示し,高温で相転移して柔粘性結晶となる化合物の開発に成功した.それらの結晶においては,電場印加により結晶の配向および分極方向を三次元的に自由に変更できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正四面体構造をもつ無極性の有機カチオンとアニオンからなる様々な有機イオン結晶を作製し,その中に,高温で柔粘性結晶となる強誘電性結晶を発見した.そして,当初の計画通り,その結晶においては電場印加により分極方向を三次元的に自由に変更できることが明らかとなった.これにより,強誘電体開発の対象となる柔粘性イオン結晶の種類が大幅に増えたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き,高温で柔粘性結晶となることが予想される様々な有機カチオンとアニオンからなる強誘電性結晶の開発を進める.それにより,より大きな電気的分極を持ち,また,低い電圧でも分極反転可能な強誘電性結晶の開発を目指す.
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