2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Stimuli-Responsive Nanoscale Molecular Systems Mimicking Biological Systems
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16H04129
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金原 数 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30282578)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 両親媒性分子 / メカノセンシティブイオンチャネル / 張力 / マルチブロック構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に確立した合成ルートを利用して,脂質二分子膜に加わった張力に代表される機械的な刺激に応答してコンフォメーションを変化させる交互両親媒性膜貫通型分子を開発することを目的とし、疎水部の数が異なる2種の分子(1merと3mer)を合成した。ここで、疎水部にメチル基を導入したビピリジンを用いることにより、疎水部のスタッキングが弱まり、脂質二分子膜の張力という弱い力に応答した分子のコンフォメーション変化が起こり、蛍光スペクトルの変化として検出できると考えた。 リン脂質DOPCと混合してジャイアントベシクル中に1merと3merをそれぞれ導入し,位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡観察により、ベシクルの膜内に1merと3merが取り込まれていることを確認した。ベシクルの内部と外部に濃度差を与え浸透圧をかけたところ、1merでは浸透圧が大きくなるに従い、短波長側にシフトした蛍光スペクトルが得られた。一方で3merの場合には、浸透圧を変化させても蛍光スペクトルの変化は観測されなかった。これは、脂質二分子膜の張力に応答して、1merのスタッキングが弱まったことを示唆している。またこれに伴い,イオン透過性が変化することが示唆された。 また,我々がこれまで熱応答性を有することを見いだしている環状マルチブロック分子骨格をもとに,芳香族部分としてBPEB部位を導入し、分子構造を単純化したマルチブロック型大環状化合物 para-MBM及びmeta-MBMを合成した。これら2分子について示差走査熱量測定(DSC)、粉末X線回折、温度可変偏光顕微鏡観察などの測定を用いて熱応答性を調べたところ,2つあるBPEB部位のうちの1つを屈曲させ構造対称性を低くしたmeta-MBMが特徴的な熱応答性を有し,結晶多形熱転移を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の主要な目的の一つが,力学的刺激に応答性を示すメカノセンシティブ分子を構築することである。本年までの成果により,二分子膜中に導入することで,浸透圧に応答して会合状態ならびにイオン透過性が変化する両親媒性マルチブロック分子の構築に成功した。これは世界で初めての人工メカノセンシティブイオンチャネルの例であり,そのインパクトは極めて大きい。一方,熱応答性分子の開発についても,まだバルクとしての物性評価の段階ではあるが,環状骨格を有するマルチブロック構造が熱応答性を付与するのに有利な構造であることを強く示唆する結果が得られている。刺激応答性という観点からは,当初計画のほぼ2/3を達成できた状況であり,研究計画はおおむね順調に進展しているとの判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
刺激応答性については,引き続き,力学応答性ならびに熱応答性の詳細を検討し,その最適化を図るとともに,より感度を高めるための分子設計を検討する。また,当初目的の一つである光応答性については,光応答性部位を導入したリガンドの開発を行い,イオンチャネル機能の光制御を検討する。 一方,膜貫通回数の最適化については,これまでの検討よりもより膜貫通回数の多いマルチブロック分子の効率的合成法の確立につとめる。このために,従来の液層合成法だけでなく,固相合成法についても検討する。
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Research Products
(18 results)