2016 Fiscal Year Annual Research Report
光アンテナ-フラーレン誘導体二元系の光線力学治療薬としての応用
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16H04133
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 篤志 広島大学, 工学研究院, 教授 (90274505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉川 幸太 広島大学, 工学研究院, 助教 (60745503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フラーレン / リポソーム / 光線力学治療 / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は光捕集部位とフラーレン誘導体をリポソーム内に共存させることよって、新しいがん治療法として注目されている高い活性をもつ光線力学治療薬の開発である。緑色植物でも用いられている光捕集部位は、フラーレンがあまり吸収できない長波長での光を吸収して、フラ-レン誘導体にその光エネルギーを渡すことで、効率を上げるものである。しかし、リポソーム内に極性の高いフラーレン誘導体を導入することは困難であった。そこで、シクロデキストリン・フラーレン誘導体からリポソーム内にフラーレン誘導体を移す交換反応法を用いることにした。 本年度はまず、交換反応法によってカチオン性置換基を持つフラーレン誘導体をリポソームに導入することを試みた。しかし、1H NMRスペクトルの測定結果から一部のフラーレン誘導体がリポソーム内に入らないことがわかった。そこで、フラーレン誘導体の導入量を脂質分子に対して10mol%から5mol%に減らすこと、シクロデキストリン・フラーレン錯体をリポソームに加えるとき、ゆっくりと撹拌をしながら加えることによってこの問題は解決できた。次に、作製したフラーレン誘導体含有リポソームを用いて、がん細胞であるHeLa細胞の光死滅実験を行った。その結果、非常に高い光線力学活性を持つことが明らかになった。この値は最もよく使用されているフォトフリンよりも高い値であった。この活性が高い原因は、長波長領域の吸収があること、フラーレン誘導体が膜表面近傍にあるため溶存酸素とのエネルギー移動効率が高くなり、その結果活性酸素の発生量が増加したためであることが確認できた。特に、フラーレン誘導体の膜内での存在位置による活性の向上は、今後光捕集部位との二元系においてもエネルギー移動効率の向上が期待できるため重要な知見となるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フラーレン誘導体がリポソーム内に全て入らないことは、本研究の大きな山であった。今回そのことが解決できたことによって、当初予定よりも早く、光捕集部位ーフラーレン誘導体の二元系での実験に進むことができるため。
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Strategy for Future Research Activity |
フラーレン誘導体含有リポソームが作製できたため、今後この系に光捕集部位を導入する。色素としてはカルボシアニン系色素であるDiDを用いる。DiDは細胞膜などを染色する色素であり、その安全性は高く低毒性である。また、吸収最大波長を650nm付近に持ち、この波長は光線力学治療のレーザー光源として最もよく用いられている波長に合致する。このDiD-フラーレン誘導体二元系を用いて、HeLa細胞を用いた細胞実験、およびアントラセン誘導体を用いた一重項酸素発生能の評価を行う。 一方、がん細胞の細胞内は正常細胞に比べpHが低いことが知られている。そのため、より低pHにおいて活性の高い光線力学治療薬を開発できれば、がん細胞選択性が出せる。そこで、光捕集部位として低pHにおいてのみ650nm付近の吸収が大きくなる色素を用いた実験も行う予定である。
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Research Products
(38 results)