2017 Fiscal Year Annual Research Report
光アンテナ-フラーレン誘導体二元系の光線力学治療薬としての応用
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16H04133
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 篤志 広島大学, 工学研究科, 教授 (90274505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉川 幸太 広島大学, 工学研究科, 助教 (60745503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フラーレン / リポソーム / 光線力学治療 / シクロデキストリン / エネルギー移動 / 一重項酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに極性基を持つC60誘導体と光アンテナ部位となるカルボシアニン系の色素をリポソーム内に共存させることに成功した。今回は、皮膚透過性が高く、深部のがんにも有効で、しかも光線力学治療でよく使用されている600nm以上の光を照射した。この二元系リポソームをがん細胞の一つであるHeLa細胞に取り込ませ、600 nm以上の波長の光を照射した。その結果、C60と色素やC70と色素を共存させた二元系リポソームに比べ、圧倒的に高いがん細胞に対する光線力学活性を示すことが明らかになった。この原因は、C60誘導体のみを含有したリポソームのこれまでの研究から、(1)C60誘導体がC60やC70に比べ長波長の可視光照射による一重項酸素の発生効率が高いこと、および(2)C60誘導体が膜表面近傍にあるため溶存酸素との接触確率が高いことが挙げられた。今回はこれらに加えて膜表面近傍に存在する光アンテナ分子を添加することによって、(3)光アンテナで吸収した光エネルギーを効率よくC60誘導体に受け渡すことができたことが高い光線力学活性を示した大きな要因となった。このC60誘導体と光アンテナ部位を共存させた二元系リポソームは、C60と光アンテナ部位およびC70と光アンテナ部位を共存させた二元系リポソームに比べ、それぞれ約10倍、また現在最も光線力学治療において使用されているフォトフリンに比べ約3.5倍高い光線力学活性を有することが明らかになった。このように、今回調製したC60誘導体と光アンテナ部位を共存させた二元系リポソームは、非常に高い光線力学活性をもつことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった光アンテナ-フラーレン誘導体二元系とすることで、光アンテナ-未修飾フラーレンを大幅に超える光線力学活性を有することを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これらの知見をもとに、これまでとは異なる種々の光アンテナ分子を用いてC60誘導体との組み合わせを試すことによって、最適な光アンテナ分子を見出す。さらに、C60誘導体をポルフィリン誘導体に変え、ポルフィリン誘導体と光アンテナ分子を組み合わせた初めての二元系についても検討を行う。これらの細胞実験には現在HeLa細胞を用いているが、今後他のがん細胞やマクロファージに対しての光線力学活性を評価する
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