2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of two-dimensional monolayer interface device based on solution process
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16H04140
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山本 浩史 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (30306534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電界効果トランジスタ / 自己組織化単分子膜 / 強相関電子系 / 界面ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、電界効果トランジスタの材料として有機モット絶縁体を用いると、非常に高いデバイスのスイッチング性能が得られることを既に見いだしている。しかし有機モット・トランジスタ(Mott-FET)はこれまで、100分子層以上の結晶で構成されていたため低温でのみ動作が可能であり、室温付近では熱キャリアの影響からON/OFF 比を向上させることが出来ていなかった。そこで本課題では、「単分子層のみ」を活性層としたトランジスタを作製し、その室温動作を目指している。 単分子層のみの有機Mott-FETを作製するには、(1)中性の伝導性分子を用いて単分子膜を作製する。(2)単分子膜に対してキャリアドープを行い、バンド充填率を0.5に調整する。という二段階のステップが必要である。そこでまず、パイ共役系分子の単分子膜を作製し、電界効果トランジスタとしての動作を計測した。すなわち、伝導性分子として広く利用されているBEDT-TTFに対してアルキル基とホスホン酸を導入し、基板に対する共有結合を利用した自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成した。さらにキャリアドープを行うために、F4TCNQによる酸化を行ったところ、Mott-FETの特徴である両極性動作が室温において確認された。さらに温度依存性などの測定により、通常の有機FETとの違いをいくつか見出すことに成功している。 一方、活性な単分子層を創成する手法として、異種結晶の貼り合わせによる界面電子の蓄積が挙げられる。この目的のために、電気化学的手法によるヘテロエピタキシャル成長を試みた。現在これに用いる電気化学セルは、液漏れの問題が発生し、その対策が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BEDT-TTFに対してアルキル基とホスホン酸を導入し、基板に対する共有結合を利用した自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成した。ホスホン酸はアルミナとの反応性が良いため、基板は熱酸化膜付きシリコン基板に対してさらにアルミナを30 nm積層することによってSAM膜の形成を容易にした。SAM膜の構造を原子間力顕微鏡(AFM)とX線反射率測定で決定した後、電界効果測定をすることによって、まずは通常のTTF誘導体と同じp型動作をすることを確認した。これは、Mott-FETの前提となる伝導層(バンド絶縁体)が形成されていることを示している。続いてSAM膜に対して様々な酸化剤による化学的キャリア注入を行ったところ、F4TCNQを用いた場合に両極性のFET特性が得られることが明らかとなった。両極性動作はMott-FETに見られる特徴であり、本デバイスがキャリアドープによるモット絶縁体状態になったことを示唆している。さらに伝導度の温度変化測定により、通常の固定されたバンド構造では説明できない温度依存性が確認された。この現象も、モット絶縁体が電界効果によって擬ギャップ状態になり、バンド構造がゲート操作によって逐次変化していると考えると説明がつく。 一方、電気化学的結晶成長を用いた異種結晶の接合形成については、マイクロ流路型電気分解セルの作製を行った。石英プレートをフォトリソグラフィによってエッチングし、流路を形成した上で白金による電極形成を行った。このマイクロ流路型電気分解セルに通液し、白金電極間に電流を流したところ、薄膜単結晶の成長を確認することが出来た。しかしながら、結晶成長中に液漏れが発生し、現在その対策を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
SAM膜を用いたMott-FETの作製については、今後スペクトロスコピーを用いた検証を行う予定である。すなわち、BEDT-TTF部位がキャリアドープされている事を、何らかの手法で検出すれば、単なるバンド絶縁体ではなく、特殊なモット絶縁体状態になっているデバイスであることがさらに確かめられると考えている。そのための手法として、赤外振動分光を用いたIRAS計測、または硫黄原子の内殻励起によるXAFS計測などで、BEDT-TTFやF4-TCNQの価数を求めていきたい。また、FETの動作性能は現在のところそれほど高いものではないため、性能向上のためのプロセス最適化として、アニーリングや分子設計にも取り組む予定である。 一方、近年の薄膜制御技術の発達により、類似の単分子膜は、SAM膜のような共有結合に頼らなくても作製出来ることが明らかとなってきている。すなわち、液晶性分子の印刷やスピンコートによっても、単分子膜FETの作製が可能である。特に、基板への共有結合に束縛されない単分子膜は、アニーリングなどによって分子配列の均一化が容易である。そこで、TTF骨格を持った液晶性材料を用いて、同様のトランジスタ動作にも取り組みたい。 有機モット絶縁体のヘテロエピタキシャル成長については、マイクロ流路型電気分解セルの改良が当面の課題である。通液時に内圧が上昇してしまうことが液漏れの原因と考えられるため、内圧をなるべく抑えた形で溶液の導入が出来るよう、送液チューブの選択や電解セルのパターンを工夫していく予定にしている。
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Research Products
(32 results)
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[Journal Article] Novel electronic ferroelectricity in an organic charge-order insulator investigated with terahertz-pump optical-probe spectroscopy2016
Author(s)
H. Yamakawa, T. Miyamoto, T. Morimoto, H. Yada, Y. Kinoshita, M. Sotome, N. Kida, K. Yamamoto, K. Iwano, Y. Matsumoto, S. Watanabe, Y. Shimoi, M. Suda, H. M. Yamamoto, H. Mori and H. Okamoto
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 20571[10pages]
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 正孔ドープした分子性ディラック電子系におけるランダウ準位交差2017
Author(s)
秋田百合香, 坪井瑛里紗, 林頌也, 小川健太郎, 田嶋尚也, 川椙義高, 須田理行, 山本浩史, 加藤礼三, 西尾豊, 梶田晃司
Organizer
物理学会年次大会
Place of Presentation
大阪大学、大阪府豊中市
Year and Date
2017-03-19 – 2017-03-20
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[Presentation] テラヘルツパルス励起による有機モット絶縁体κ型BEDT-TTF塩の電子状態制御の研究2017
Author(s)
山川大路, 戸部光, 宮本辰也, 寺重翼, 森本剛史, 貴田徳明, 宮川和也, 鹿野田一司, 須田理行, 山本浩史, 岡本博
Organizer
物理学会年次大会
Place of Presentation
大阪大学、大阪府豊中市
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] 有機モット絶縁体κ型BEDT-TTF塩のテラヘルツ電場誘起金属化と光誘起金属化2016
Author(s)
山川大路, 竹中崇了, 宮本辰也, 寺重翼, 小野貴晃, 森本剛史, 貴田徳明, 山本浩史, 須田理行, 加藤礼三, 宮川和也, 鹿野田一司, 岡本博
Organizer
物理学会秋期大会
Place of Presentation
東北学院大学、宮城県仙台市
Year and Date
2016-09-19 – 2016-09-22
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[Presentation] 分子性ディラック電子系におけるスピン分裂2016
Author(s)
林頌也, 須佐直人, 小澤拓弥, 田嶋尚也, 川椙義高, 須田理行, 山本浩史, 加藤礼三, 西尾豊, 梶田晃示
Organizer
物理学会秋期大会
Place of Presentation
東北学院大学、宮城県仙台市
Year and Date
2016-09-19 – 2016-09-22
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