2016 Fiscal Year Annual Research Report
Catalytic Asymmetric Hydrogenation of Heteroarenes
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16H04149
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 理学研究院, 教授 (20273477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 / 水素化 / 芳香族複素環 / チアゾール / ピラジン / アザインドール / ルテニウム / イリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
1.チアゾールの不斉水素化 PhTRAP-ルテニウム錯体を不斉触媒として、2,5-ジフェニルチアゾールの水素化を試みたところ、低収率ながらも水素化は進行し、高エナンチオ選択的な光学活性チアゾリンの生成が確認された。この低収率の原因がチアゾリン生成物のルテニウムへの配位による生成物阻害に起因するものと考え、この配位を回避するために様々な酸化剤の共存下で水素化を試みたが、目的の生成物は得られなかった。 2.ピラジンの不斉水素化 [Ir(cod)2]Clと幾つかの光学活性ホスフィン配位子より調製されるイリジウム錯体を用いて、2-フェニルピラジンの触媒的不斉水素化を試みた。イリジウム錯体自体はピラジンの水素化に触媒活性をほとんど示さなかったが、ルイス酸であるフッ化ホウ素を添加することにより水素化が進行することがわかった。最終的に、XylBINAPを不斉配位子として用いることにより、中程度の収率、良好な立体選択性で目的の光学活性ピペラジンが得られることを見出した。これは、窒素原子上を保護することなく光学活性ピペラジンを高エナンチオ選択的に与えるピラジンの不斉水素化の初めての例となる。 3.アザインドールの触媒的不斉水素化 この研究課題に関連してピロールとピリジンが縮環したアザインドール類の触媒的不斉水素化について検討した。その結果、PhTRAP-ルテニウム錯体を不斉触媒とすることによりピロール環側が選択的に還元され、光学活性なアザインドールを最高95%eeで与えることを見出した。この反応では水素化される環を制御する必要があるが、このルテニウム触媒を用いることによってそれを完璧に制御し、その上で立体化学を高度に制御した点で、学術的に意義のある成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、チアゾールの触媒的不斉水素化については高い立体選択性を達成しているものの、触媒活性の改善には至っておらず、当初の計画と比較して進捗が遅れている。一方、ピラジンの不斉水素化については、十分に満足な結果が得られているわけではないが、中程度の収率かつ良好なエナンチオ選択性で水素化が進行することを見出しており、今後、この知見を基盤にして反応条件や触媒系の改良により、目標とする成果の達成に向けた鍵が得られている。さらに、当初予想していなかったアザインドールの不斉水素化が高い立体選択性かつ化学選択性で進行することを見出せており、今後の発展が期待される。以上から、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.チアゾールの不斉水素化 チアゾリン生成物のルテニウムへの配位を阻害するために、チアゾールの硫黄原子とより強い相互作用を示す金属塩を添加し、チアゾールの不斉水素化を試みる。これによって、チアゾリン生成物の硫黄原子に添加した金属塩で保護されるため、生成物阻害を回避できるものと考えている。 2.ピラジンの不斉水素化 前年度に見出された触媒系を利用して、広範囲の光学活性ビスホスフィン配位子を用いて2-フェニルピラジンの不斉水素化を試み、この反応に適した不斉触媒を開発する。さらに、基質適用範囲について調査する。 3.アザインドールの不斉水素化 キノリンやピリジンの触媒的不斉水素化に有用である光学活性イリジウム錯体やルテニウム錯体などを用いて、ピリジン環を選択的に水素化可能な触媒系を見出し、4,5,6,7-テトラヒドロアザインドールを高エナンチオ選択的に与える触媒系を開発する。
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Research Products
(4 results)