2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Functional Materials Utilizing Structural Characteristics of Helical Polymers Capable of Interconverting Dynamic and Static Properties
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16H04154
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90303669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井改 知幸 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90402495)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機能性高分子 / キラル高分子 / 分子認識 / らせん / ポリアセチレン / 不斉識別 / 光学活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポリ(ジフェニルアセチレン)のユニークな構造特性を活用した高性能キラルマテリアルとしての機能開拓を目指し、次の4項目について検討することを目的としている。1. 色・発光の変化を利用した比色検出型キラルセンサーの開発、2. キラル識別能の自在スイッチングが可能なキラル固定相の開発、3. 発光波長や回転方向の制御が可能な円偏光発光材料の開発、4. 未解明のポリ(ジフェニルアセチレン)のらせん構造の分子レベルでの解明 本年度は、項目2と3に関して以下の成果が得られた。側鎖にキラル置換基をアミド結合を介して導入した共重合体が、キラル置換基の含有量によってらせんの巻き方向が反転することを見出した。また、キラル置換基の含有量が30-50 mol%程度の共重合体の場合に、加熱処理に使用する溶媒によって誘起されるらせんの巻き方向が反転することを見出した。これらの互いに逆巻きのらせん構造を形成している共重合体をキラル固定相に応用したところ、幾つかのラセミ体に対してエナンチオマーの溶出順序が反転することが明らかになった。また、らせんの巻き方向が互いに逆のこれらのポリマーが、鏡像関係の円偏光発光特性を示すことを実証した。 項目1について、らせん構造を記憶として保持した側鎖にカルボキシル基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)をキラルアミンと高分子反応することにより、そのキラリティを溶液の色と発光強度の変化から目視により識別できることを見出していた。本年度は、高分子反応するアミンの鏡像対過剰率(ee)と溶液の色の変化の関係を詳細に調べ、反応後のポリマーのTHF溶液にDMF等の極性溶媒を添加することによって、色変化が起こるアミンのeeがシフトすることを見出した。この特異な性質を利用すると、色変化からアミンのeeを直接決定できる比色キラルセンサーとして本ポリマーが応用可能であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に掲げた4つの各研究項目に関して、特に1-3の研究項目に関して今年度予定していた十分な研究成果が得られた。一方、項目4の「ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体のらせん構造の分子レベルで解明」に関しては、今年度はまだ十分な解明が達成できなかった。しかし、全体的には概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的に掲げた4つの各研究項目に対して、今後の推進方策を以下に示す。 1. 色や発光の変化を利用した比色検出型のキラルセンサーの開発:今年度に引き続き、比色検出型キラリティセンサーとして機能するポリマーの分子レベルでの機構解明を行うとともに、その適用範囲や一般性を調べる。特に、色変化からアミンの鏡像体過剰率を直接決定できるキラルセンサーとして機能することを実証する。さらに、キラル化合物との非共有結合相互作用によってそのキラリティを色や発光の変化により検知できるキラルセンサーの開発を推進する。 2. キラル識別能の自在スイッチングが可能なキラル固定相:当初の計画では、光学不活性ポリマーへのキラルゲストによるらせん誘起と記憶を利用したスイッチングキラル固定相の開発を想定していた。しかし、本年度の成果から、外部刺激によってらせんの向きが反転する光学活性ポリマーをキラル固定相に応用しても、エナンチオマーの溶出順序が反転することが明らかになった。そこで今後は、アキラルな外部刺激による主鎖のらせん構造変化によって光学分割能が変化するキラル固定相の開発についても検討を行う。 3. 発光波長や回転方向の制御が可能な円偏光発光材料の開発:今年度の研究成果から、アミド結合を介して光学活性基を導入したポリ(ジフェニルアセチレン)が、加熱処理の際に使用する溶媒の変化により、らせん反転を起こし、鏡像関係の円偏光発光特性を示すことが実証された。今後は、温度など他の外部刺激に応答して、らせん反転やコンホメーション変化を起こすポリマーの開発を検討する。 4. ポリ(ジフェニルアセチレン)のらせん構造の分子レベルでの解明: まだ十分な解明が達成されていないため、今年度に引き続き、ポリ(ジフェニルアセチレン)のらせん構造を主鎖の立体規則性も含めて初めて分子レベルで正確に決定する。
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