2016 Fiscal Year Annual Research Report
コラーゲン選択的架橋剤の創製と角膜実質の架橋による物性変化の非侵襲的測定法の開発
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16H04156
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安中 雅彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (40282446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 豊明 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10238959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コラーゲン / コラーゲンモデルペプチド / ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
コラーゲンは現在知られている28種全てで三重らせんを形成することが知られており,その構造を安定化させる要因を解明するためにコラーゲンモデルペプチド(CMP)が有用である。特に (Pro-Hyp-Gly)をくり返し単位に持つCMPは,ヒドロキシプロリン(Hyp)の分子間水素結合を駆動力として三重らせんを形成し,分子量が3kD以下でありながら天然コラーゲンとほぼ同一の三重らせんを形成することが知られている。平成28年度は (Pro-Hyp-Gly)10に注目し,これを多分岐ポリエチレングリコール(Multi-arm-PEG)末端に導入した生体架橋剤Multi-arm-PEG-(POG)10の創製を行った。この生体架橋剤のそれぞれの枝が生体組織内の別々のコラーゲンと多点で水素結合を介した三重らせんを形成させ,それを物理架橋点とするゲル形成を目的とした。具体的には,(1)Multi-arm-PEG-(POG)10の合成, (2)Multi-arm-PEG-(POG)10の三重らせん形成能の確認,(3)コラーゲンのMulti-arm-PEG-(POG)10によるゲル化評価,(4)生成ゲル力学物性評価を実施した。検討(1)-(3)では,Multi-arm-PEG-(POG)10とコラーゲンとの架橋生成によるゲル化検討を行い,PEG分岐数(f = 2, 4, 8)およびPEG分子量(M = 5000 - 20000)の最適化を行った。Multi-arm-PEG-(POG)10の三重らせん形成は円偏向二色性スペクトル (CDスペクトル)で確認を行った。(POG)10は79℃以上で三重らせんが解離することが確認されているので,ゲルの熱的安定性をCDスペクトル評価することで三重らせん形成とゲル化能との関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基本的な構想は,本研究は特に角膜,関節液,軟骨などの細胞外マトリクス (ECM)が関わる生体現象を,構造・物性・ダイナミクスの観点から,分子レベルで総合的に理解することである。本研究では,特に角膜に注目し,平成28年度は以下の2つの項目の達成を目標とした。(1)コラーゲンを特異的に認識する選択的生体架橋剤Multi-arm-PEG-(POG)10の創製と架橋メカニズムの解明,(2)高速かつ高空間分解能計測が可能な段差の大きい仮想的な回折格子(VIPA)を用いたブリルアン光学系を用いた分光器の開発である。項目(1)は予定通り達成できたが,(2)については光学系の構築は行ったが,高速計測性能確認までは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,前年度構築を実施した「高速かつ高空間分解能計測が可能な段差の大きい仮想的な回折格子(VIPA)を用いたブリルアン光学系を用いた分光器」の高速計測性能確認を紫外線硬化樹脂(光学接着剤Norland 61)の硬化(化学架橋)過程の観測により実施する。その他は計画通りの検討を実施する。つまり,ゲルの架橋構造はその物性・機能と密接に相関しているため,その架橋構造を明らかにすること,さらに,生体架橋剤Multi-arm-PEG-(POG)10の分子選択性を定量的に明らかにする。具体的には,(1)コラーゲンの架橋構造,(2)生体架橋剤がコラーゲンのどの部分と相互作用し架橋構造を形成するのか,(3)生体架橋剤の分子選択について検討する。
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