2017 Fiscal Year Annual Research Report
コラーゲン選択的架橋剤の創製と角膜実質の架橋による物性変化の非侵襲的測定法の開発
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16H04156
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安中 雅彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (40282446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 豊明 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10238959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 角膜 / 架橋 / 力学物性 / ブリルアン顕微鏡システム |
Outline of Annual Research Achievements |
眼球組織で最も外側に位置し可視光に対して殆ど透明である角膜ゲルの角膜実質のコラーゲンの架橋構造およびその安定性の要因,架橋構造修復のための新規架橋剤の創製,架橋角膜ゲルの非侵襲的物性評価に注目する。具体的には病態により①破壊された角膜実質架橋の分子特異的な修復にためのコラーゲンを特異的に認識する生体架橋剤の創製,②角膜実質の力学物性(架橋度)の非侵襲的観測法の確立,さらに③角膜の構造・物性から円錐角膜等の疾患を分子レベルで理解することを目的としている。 2017年度は,「生きたままの状態の架橋コラーゲンゲルの力学物性を非侵襲的に評価する」ことを目的に研究を実施した。具体的には,高速かつ高空間分解能計測が可能なブリルアン散乱光学系を用いて,in situ かつ in vivo条件で弾性率が測定できるブリルアン顕微鏡システムを構築した。その結果,(1)高速かつ高空間分解能計測が可能な仮想的回折格子(Virtually Imaged Phased Array, VIPA etalon) をタンデム型で導入した分光器を作製を達成した。さらに,(2)本システムを用いて,リボフラビン点眼と紫外線照射により架橋した角膜実質,本申請課題で検討中の生体架橋剤を用いた架橋角膜実質について,その力学物性を詳細に検討し,角膜実質のコラーゲンの架橋構造およびその安定性の要因を検討することができた。具体的には下記の通りである。 (1)豚摘出眼を用いたin vivo測定実験:豚摘出眼を試料としてブリルアン顕微鏡を用いた高速・高分解弾性率測定に成功した。 (2)ブリルアン顕微鏡を用いて「生きたまま」の状態の白色家兎の角膜の弾性率の高速・高分解弾性率測定の検証を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,角膜の力学物性は,摘出試料を用いて侵襲的に検討されてきたが,生きたままの状態でリアルタイムに非侵襲的に評価をすることは,生体で観測される様々な生命現象の理解を,平衡系から,生物らしい時空スケールで非平衡定常状態として発現される系へと広げるという点で科学的に極めて重要である。さらに,治療で行われる角膜の架橋過程を,弾性率で非侵襲的かつリアルタイムに評価可能となるので,角膜がどの程度架橋されたかを定性的に評価出来るようになる。非弾性散乱法であるブリルアン散乱法は,試料の粘弾性的性質を非侵襲的に直接測定可能な方法として有用であり,物質の特性解析に広く用いられてきた。ブリルアン散乱法は本申請で研究対象とする角膜の力学物性の観測にも有用であるが,しかしながら,Fabry-Perot干渉計をはじめとする従来の光学系は,計測に長時間を有するため,計測をpoint samplingから角膜全体へ拡張することは実用上不可能であった。この問題を解決するために,ブリルアン光学系に高速かつ高空間分解能計測が可能な仮想的な回折格子(VIPA etalon)をタンデム型で導入したブリルアン分光器の開発し,さらに光学顕微鏡にこの分光器を組み込むことで,高速・高分解能で力学物性(弾性)のマッピングを行い,試料の局所的な粘弾性情報とその空間分布計測を実現することが可能となった。今後の課題としては,共焦点顕微鏡にこの光学系を組み込み,深さ方向の情報の取り込みを可能とすることである。
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Strategy for Future Research Activity |
ブリルアン光学系に高速かつ高空間分解能計測が可能な仮想的な回折格子(VIPA etalon)をタンデム型で導入したブリルアン分光器の開発し,さらに光学顕微鏡にこの分光器を組み込むことで,高速・高分解能で力学物性(弾性)のマッピングを行い,試料の局所的な粘弾性情報とその空間分布計測を実現することが可能となったが,現時点で深さ方向の情報の取り込みを可能とするまでには至っていない。開発したシステムは,ファイバー光学系で,シングルモード光ファイバーを用いているので,顕微鏡ステージを正確にZ軸方向に移動可能なピエゾ素子を用いれば達成できると考えられる。
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