2017 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド鎖を活用する超高親和性RNA結合リガンドの創成と応用
Project/Area Number |
16H04159
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西澤 精一 東北大学, 理学研究科, 教授 (40281969)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄介 東北大学, 理学研究科, 助教 (90583039)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ノンコーディングRNA / リガンド / 検出 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ノンコーディングRNA(ncRNA)の高感度検出(in vitro)と生細胞内可視化のためのケミカルプローブとして、RNA結合タンパク質に匹敵する結合力と選択性を兼ね備えたRNA結合リガンドを開発することを試みる。具体的には、miRNAやsiRNA等を研究対象とするもので、蛍光性RNA結合リガンドを利用するncRNA解析法を提案、新規な分析方法論としての有用性を実証するとともに、その技術基盤を確立することを目指す。 平成29年度は、昨年度に開発した三重鎖形成ペプチド核酸(PNA)プローブの機能改良を進めるとともに、より詳細な結合機構の解析を試みた。その結果、赤色蛍光応答型のPNAプローブを開発することに成功した(Org. Biomol. Chem. 2017)。具体的には、赤色蛍光色素(キノリンブルー)を疑似塩基として組み込んだもので、ナノレベルの結合力(解離定数 7.3 nM)と明瞭なoff-on 型のlight-up応答(極大波長 608 nm)を示す。先に開発した緑色蛍光PNAプローブ(JACS 2016)と同様に、RNA二重鎖の塩基配列に極めて高選択的かつ迅速に三重鎖を形成する。加えて、その蛍光応答特性は、RNA検出プローブとして大変優れたもので、プローブ単体ではほぼ無蛍光(Φ = 0.0017)であるが、RNA二重鎖との結合に伴い180倍以上の蛍光量子収率の増大を示す。 また、熱力学的・速度論的な解析により、RNA二重鎖とPNAとの三重鎖形成反応が、“方向性のない”nucleation-zipping mechanismに基づくことを明らかにした(Org. Biomol. Chem. 2018)。方向性がないことが、通常の三重鎖形成反応には見られない特徴で、また、RNA二重鎖の中央付近に位置する塩基が、結合選択性を大きく支配することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、現段階において、蛍光色素を疑似塩基として組み込んだペプチド核酸(PNA)プローブの優れた検出機能を明らかにすることができた。DNA を骨格とする従来の三重鎖形成核酸プローブと比較して、PNAプローブの優れた特性は、(i)RNA二重鎖結合タンパク質(受容体)に匹敵する結合力を発現すること、(ii)世界最高レベルのoff-on型の蛍光応答を示すこと、また、(iii)極めて迅速(~180秒)かつ塩基配列選択的に三重鎖形成が進行することで、従来、困難とされてきたRNA二重鎖構造(塩基配列)の迅速な検出が可能である。また、より実用に適した赤色蛍光応答型についても開発の目処がついた。加えて「オーバーハング結合部位」と「三重鎖形成部位(PNA)」、あるいは「正電荷性のアミノ酸からなるペプチド鎖」を連結したリガンドの合成を完了し、基本性能に関する検討では良好な結果を得ている。今後、生細胞内や実試料を対象としたイメージング・検出機能等について評価するとともに、これらのRNA結合リガンドの機能改良をさらに進めることで、実用に供しうる分析法としての有用性を実証できることが期待できる。 以上のように、本研究は、おおむね順調に進展していると自己評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の研究計画に従って研究を進める。すなわち、申請者らが独自に開発を進めてきた、「オーバーハング結合リガンド」及び「AP site結合リガンド」をベースとして、これらに、「正電荷性のアミノ酸からなるペプチド鎖」及び「ペプチド核酸(三重鎖形成部位)」を連結することで、高親和性・高選択性のRNA結合リガンドを設計・合成する。新たに合成したRNA結合リガンドについて、RNAとの相互作用(in vitro)を評価し、RNA結合リガンドの基本性能(結合定数や結合選択性、蛍光特性など)について評価する。得られた知見をベースとして、RNA結合リガンドの改良合成にフィードバックし、各RNA結合リガンド機能の最適化を図る。さらに、生細胞内でのsiRNAイメージング機能、実試料を対象としたmiRNA検出機能等について評価する。 以上のように研究を遂行し、RNA結合リガンドに基づくRNA解析法(in vitro検出と細胞内イメージング)の有用性を実証、新規な分析方法論としての技術基盤を確立することを目指す。
|