2018 Fiscal Year Annual Research Report
メソ細孔空間における酵素構造の理解と機能集積酵素センサーの開発
Project/Area Number |
16H04160
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山口 央 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10359531)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 徹二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70392587)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メソ多孔材料 / 酵素センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度までは,(1) 酵素安定化機構の解明,(2) 機能集積型酵素センサー開発,(3) 高感度計測系の開発の3課題について研究を遂行した。 課題(1):「水素結合性分子凝集体の構造化エネルギー」,「反応中心の構造」,「酵素凝集」におよぼす細孔空間サイズの影響を中性子散乱測定などから解明する中で,サブnmレベルの空間サイズ変化により生体高分子の高次構造・凝集構造が劇的に変化することを見いだしてきた。塩基数の異なるDNA二重鎖形成について,サイズマッチングによる劇的な構造安定化効果の定量化や,細孔内での配向性の変化などの現象を見いだした。また,熱測定によるタンパク質吸着の評価系を構築し,モデルタンパク質であるミオグロビンの細孔内吸着がLangmuirモデルと異なることを見いだした。細孔サイズとミオグロビン高次構造の相関について,中性子散乱や赤外吸収などの多面的な評価から,ミオグロビン高次構造が細孔サイズよりは細孔内表面状態に強く依存することも明らかとした。これらの結果は,酵素センサー設計の指針となるものである。また,銅タンパク質の反応中心構造(銅配位構造)について,細孔サイズによって変化することを実証し,細孔サイズによる活性制御の可能性が示唆された。 課題(2):細孔内酵素反応によって生成する過酸化水素の計測試薬の開発を進めると共に,安定かつ高感度なセンサー開発を進めた。その中で,従来のシリカと異なる無機材料で,グルコースオキシダーゼの固定化に適切な多孔質材料の開発に成功した。 課題(3):課題(2)で得られた成果を基に,高感度計測系の設計を行っている。これまでに,汗や呼気に対する応答するセンサーを試作し,応答確認をしてきた。また,光誘起電子移動を利用した高感度過酸化水素計測プローブ分子の合成を行い,基礎的な物性評価から高感度分析への適用性を確認してきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「酵素安定化機構の解明」については,酵素の細孔内吸着や高次構造に及ぼす細孔サイズの影響,細孔内表面の影響について新たな現象を見いだすことが出来た。また,酵素センサー開発に必要な新しい多孔性材料の合成,過酸化水素計測プローブ分子の合成も行っている。上記の知見と材料から「機能集積型酵素センサー開発」課題を遂行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
H30年度までは,(1) 酵素安定化機構の解明,(2) 機能集積型酵素センサー開発の2課題について研究を遂行した。H31年度も上記課題を継続する。 課題(1):H30年度までに「水素結合性分子凝集体の構造化エネルギー」,「反応中心の構造」,「酵素凝集」におよぼす細孔空間サイズの影響を中性子散乱測定などから解明してきた。その中で見いだしてきた「メソ細孔に対するタンパク質吸着の特異性」について検証を進める。 課題(2):H30年度までに,従来のシリカと異なる無機材料で,グルコースオキシダーゼの固定化に適切な多孔質膜材料の開発に成功した。この多孔質膜材料の改良を進めると共に,高感度酵素センサー開発を進めていく。また,合成した過酸化水素計測プローブ分子を用いた高感度分析系の開拓も進める。 課題(3):課題(2)で得られる知見を基にして高感度計測系の設計を行う。これまでに,汗や唾液を対象とするセンサー開発に着手し,予備的な応答を得ている。センサー構造の再設計などから高感度測定を達成していく。
|
Research Products
(20 results)