2017 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ気泡およびナノ超臨界流体を構成要素とする複合分離場の創製と高機能化
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16H04161
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋川 雅美 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60148088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60343018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロマトグラフィー / 疎水性ナノ空間 / ナノ気泡 / ナノ超臨界流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,疎水性ナノ細孔が気相および超臨界流体を安定に保持するという特異的機能を利用して,気相から超臨界流体まで広範囲に密度変換可能なナノ空間を介在する複合分離場を有する液体クロマトグラフィーシステムを設計・開発して,従来法にない分離選択性と高機能性を発現することを目的としている。 本年度はまず,すでに開発したナノ気泡を固定相の構成要素とするHPLCである表面気泡変調液体クロマトグラフィー(SBMLC)により,アルキル結合型シリカカラムを用いた逆相分離場の溶質保持機構の解明を行った。この系は最も汎用的に用いられる分離系であり,アルキル結合層,疎水界面水,およびシリカ基材表面のエンドキャッピング層が固定相として機能するハイブリッド固定相をもつと考えられる。SBMLCはこれに気相が固定相として加わるが,気相体積は圧力によって変えることができ,それに対応してバルク水と疎水界面水も変化する。これに対して,アルキル結合相体積は一定とみなすことができる。これを利用して,種々の溶質の保持体積の圧力依存性を解析することによって,各相および界面とバルク水相との間の分配係数を求めた。その結果,アルキル結合層,疎水界面水,およびエンドキャッピング層が示す各溶質の保持への寄与を定量的に評価することに成功した。 次に,昨年度開発した方法により,アルキル結合型シリカカラムと二酸化炭素水溶液を用いてナノ超臨界二酸化炭素を固定化した超臨界流体固定化HPLC(SFS-LC)システムを構築し,種々の溶質の保持体積を測定してその分離機構の解明を行った。その結果,溶質保持に対する疎水界面水の寄与はSBMLCと同様極めて小さく,界面水に主に保持される化合物の保持体積は小さいのに対して,超臨界二酸化炭素に分配する化合物の保持は大きくなることが明らかになった。また,高流速で高い理論段数が得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発したSBMLCを用いて,最大の目的の一つである,逆相分離系における固定相の各構成要素(水/疎水性界面,アルキル結合層,およびエンドキャッピング層)の溶質保持への寄与を定量的に評価することに成功した。これにより,これまで明らかにされてこなかった逆相分離系における溶質保持機構を解明することができた。アルコール,ニトリル,ケトンなどの親水性官能基を持つ化合物は主に水/疎水性界面に保持されるのに対して,ベンゼンやクロロホルムなどの非極性化合物は界面と同時にアルキル結合層内部にも分配していることを初めて実験的に明らかにしたことは大きな成果である。 さらにSFS-LCを実現し,有効な固定相として機能する超臨界二酸化炭素を分離媒体とする実用的な分離法として確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の化合物についてSBMLCおよびSFS-LCにおける理論段相当高さを測定し,van Deemterプロットを作成してカラム効率の移動相流量依存性を調べる。気相および超臨界二酸化炭素相が連続体である系と充填剤粒子間で分断されている系を仮定してそれぞれのモデルを構築し,固定相での分子拡散の寄与がカラム効率に与える効果を定量的に評価して実験的に得られたカラム効率(理論段高さ)を考察する。またカラム内での圧力降下を小さくするため,200℃までの超高温水を移動相とする系で測定を行い,固定化したナノ気泡および超臨界二酸化炭素を維持しつつ高速分離が可能な条件を見出す。 従来の逆相分離法では水/疎水性界面の大きな寄与により覆い隠されていた分離材料自身の分離特性が,SBMLCおよびSFS-LCを用いることによって引き出される上,複数の異なる疎水表面を細孔内部と外部とにもつ充填剤を用いれば,細孔内の気相のサイズを変えることにより2つの界面の相対的な大きさを変え,分離選択性の変換が可能であると考えられる。そこで,シリカゲルを基材として,これらを可能にする複数の異なる化学表面構造を持つ充填剤を合成する。水中の揮発性および不揮発性化合物の一斉分析や生体高分子と薬物の同時分析などに開発したHPLC法を応用して,その可能性を検証するとともに高機能化をはかり,実用分析法としての確立を目指す。
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