2017 Fiscal Year Annual Research Report
MEMS加工デバイスにより大気中化学物質の気相/粒子間の相間移動を追跡する
Project/Area Number |
16H04168
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
戸田 敬 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (90264275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 慎一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60547826)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロウエットデニューダー / 気相・粒子 / PM2.5 / カルボニル化合物 / 揮発性有機化合物 / 富士山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究室で試作したwet denuderとparticle collectorを用い,大気中のdicarbonylsについて詳細なデータを得ることができた。特に,glyoxalとmethylglyoxalについて,気相での存在量と粒子相での存在量の推移を1時間毎に得ることができた。これらの物質は主に日中濃度が上昇し,大気の光化学反応によって二次的に生成していることが示唆された。また,夜間から早朝にかけ,粒子相へ大きく移行していることが判明した。これは湿性粒子の成長によりこの気相粒子間の分配が移動したためと思われる。また,一旦粒子相に移行したdicarbonylsは粒子が減衰しても気相に再流出せず留まっていることも示された。このことは,粒子内で種々の形に変化して存在していることが考えられる。また,8月には富士山にてdicarbonylsの採取を試みた。この結果から,富士山のような高層大気では,二次生成の影響はあまりみられなかったが,越境汚染の影響をあらわす推移となった。また,このような高層大気にもかかわらず,熊本の市街とほぼ同じ程度の濃度で大気にdicarbonylsが存在することが明らかになった。また,富士山頂では,より大きく粒子相に分配が移動していることも判明した。 また,wet denuderをMEMS技術により小型化することも進めた。まずはMEMSにより表面改質を行い,きわめて濡れ性の良いチップを作成することに成功した。陽極酸化エッチングや違法性エッチングにより表面に微細な溝や凹凸を形成し,キャピラリ効果を面で得ることに成功した。これにガスを導入するハウジングなどハイブリッド化して採取に使える形にすることが望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PM2.5の発生や成長に寄与していると考えられている化合物についてその実態を詳細に明らかにすることに成功した。本内容は米国化学会のジャーナルに投稿中である。また,富士山頂など過酷な場所でもフィールド観測に成功し大きな成果を得ることができた。一方デバイスの方は,MEMSによる表面改質をいくつか試行し,そのうちの2つの手法で大きな濡れ性を示す基板を作成することに成功した。本チップを組み込んだwet denuderにより,さらに詳細な大気観測がフィールドで可能になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
dicarbonylsについてはさらに観測を続けていくが,さらに興味ある対象の物質についても観測を手掛けていく。また,気相から粒子に移行した化学物質は粒子内でさまざまな形態になっていると考えられるが,粒子内のケミストリーを探るべく粒子相から新たな物質の発見や考察を進めていきたいと考えている。MEMS型wet denuderについても,まだ改良が必要であるが,組み込みを工夫して大気観測に応用していきたい。
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Research Products
(14 results)