2018 Fiscal Year Annual Research Report
MEMS加工デバイスにより大気中化学物質の気相/粒子間の相間移動を追跡する
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16H04168
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
戸田 敬 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (90264275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 慎一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60547826)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大気粒子 / 気相・粒子 / ジメチルスルフィド / カルボニル化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気に存在する自然起因の揮発性物質について,これらの大気中での相平衡やさまざまな反応を明らかにし,PM2.5のような微小粒子の形成に関する知見を得ることを最終目的としている。そこでまず,これらの成分が気相/粒子間でのふるまいを明らかにするため,フィルター捕集や固体デニューダーで調べられなかった変遷について,連続測定を達成することによってその状況を提示する。それにはウエットデニューダーとパーティクルコレクタにより,気相と粒子相にまたがって存在している化学物質の動態を詳細に明らかにする。 2018年度はMEMS大気捕集デバイスの改良と評価をすすめた。シリコン基板に製作したマイクロデニューダーチップをデニューダーとして機能するよう基板回りの吸収液導入や大気導入部分の作りこみを行い,実際に試験空気と吸収液を導入した試験を行ない,おおむね駆動することができた。 また,粒子形成のもとになる自然起因の硫黄化合物質であるジメチルスルフィド(DMS)の分析装置をてがけた。大気のDMSに加え,海水に溶存するDMS,またその前駆物質となりプランクトンが生成するdimethylsulfoniopropionate(DMSP)を観測できる極めて高感度な装置を達成した。本装置を調査船に設置して,海洋大気や海洋の硫黄化合物の分布の計測にはじめて成功した。 大気観測についても,カルボニル化合物が気相から粒子相に移行し,かつ粒子内でオリゴマー化やポリマー化していることを明らかにした。本結果は ACS Earth Space Chem. や Environ. Chem. Lett. などの学術誌に発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMSを使った大気捕集デバイスをいくつか試作し評価を行っている。そのうちのひとつは想定通りの性能を示しており,フィールドで用いるデバイスへの展開が期待できる。 また,大気観測についても一定の結果が得られている。特に二次有機エアロゾルが生成するプロセスで重要な大気の粒子界面での物質移動や粒子内反応に関わる知見が得られている。大気粒子のはじまりは硫酸塩エアロゾルが中心となっていると考えられるが,地球規模でみた場合に大気への硫黄の供給の1/3を占めるとも言われる海洋からのジメチルスルフィド(DMS)の発生やその前駆物質についても新たな分析システムを構築した。本装置により八代海や有明海での海水や大気において,DMSやその関連物質に大きな濃度分布のあることを明らかにした。これらの物質がローカルなエリアで分布のあることは今回世界でも初めて提示された事実である。
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Strategy for Future Research Activity |
MEMSデバイスのガス捕集に関し,様々な成分について評価しデータを蓄積する。本デバイスを用い,実際に大気捕集の評価を行う。 大気観測については,カルボニル類について一定の知見が得られているので,二次有機エアロゾルの形成に関わると考えられるさまざまな有機化合物に関する気相・粒子相間の物質移動の評価を行っていく。特に発癌性が懸念され大気化学反応で生成の可能性のあるニトロフェノール類や,自然起因の有機化合物から生成する高極性の化合物にターゲットを絞り,その捕集法の評価,分析法の確立,大気観測と順次すすめていく。
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Research Products
(18 results)