2016 Fiscal Year Annual Research Report
PDMSマイクロ流体デバイスの特性を活かしたddPCRプラットフォームの構築
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16H04171
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
橋本 雅彦 同志社大学, 理工学部, 准教授 (20439251)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロフルイディクス / ドロップレット / エマルション / デジタルPCR / ドロップレットデジタルPCR / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリジメチルシロキサン(PDMS)製マイクロ流路をPDMSの自己吸着性のみを利用してガラス基板上に可逆的に密着させ作製したハイブリッドマイクロ流体チップを用いることによって、油中水滴を自律的に生成させることに成功した。調製した液滴内でPCR増幅を行った後、これらの液滴の蛍光イメージングを実行した。蛍光画像内の1,000個以上の液滴サンプルの蛍光強度を測定し、蛍光強度別の液滴個数を示したヒストグラムを作成した。一液滴中の平均分子数(λ)が0.1, 0.2, 0.3となるようにサンプル調製した場合、ブランク液滴と有意な蛍光強度の差を示した液滴の割合はそれぞれ、9.4, 19.7, 24.4%であった。これらの値は、ポアソン分布の式より予想される値(9.5, 18.1, 25.9%)と良好な一致を示した。λの値を0.3以下とした場合、液滴内に二分子以上のDNAが封入される確率は無視できるため、蛍光した液滴内での変異型DNA増幅は、ほぼ全て一分子から開始されたとみなすことができる。これらの結果より、液滴内における一分子からのPCR増幅、すなわちddPCRの成功が確認された。以上の研究成果は、下記の専門誌に掲載され、当該号の表紙に選定された。
“A Poly(dimethylsiloxane) Microfluidic Sheet Reversibly Adhered on a Glass Plate for Creation of Emulsion Droplets for Droplet Digital PCR”, Yuta Nakashoji, Hironari Tanaka, Kazuhiko Tsukagoshi, and Masahiko Hashimoto, Electrophoresis, 38, 296-304 (2017).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したとおり、マイクロ流路パターンが転写されたPDMSシートをPDMSの自己吸着性のみを利用してガラス基板に可逆的に密着させたPDMS/ガラスのハイブリッド型マイクロ流体デバイスを作製し、本デバイスでも単分散油中水滴の自律駆動的生成が可能であることを見出した。本デバイスは、マイクロ流路が偶発的にブロックされた場合でも容易に流路を元の状態に回復させることができるため、デバイスの寿命を著しく延ばすことが可能となった。これは、当初予想していなかった貴重な発見であり、マイクロ流体デバイスを用いて単分散油中水滴を調製するのに要するコストを大幅に削減することへとつながった。一方、平成28年度に目標としていた液滴生成速度の向上は、十分には達成されていないため、引き続き検討を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究課題における第2ステージと位置付け、PCR後の液滴からの蛍光シグナルをハイスループットにスクリーニング可能なマイクロ流体デバイスの開発に取り組む。本研究では、PDMS製吸引アクチュエーターをマイクロ流体デバイスの上部に装着することによって、液滴を自律駆動的にマイクロ流路内へ導入・流動させ、EMCCDカメラを用いて定点で連続的に蛍光イメージングするスクリーニング方式を採用する。市販のddPCRシステムの液滴スクリーニング・レートは、~180 Hz(バイオラッド社)であり、この値を向上させるためには、マイクロ流路内を流れる液滴の流動速度を増大させるか、あるいはマイクロ流路をマルチプレックス化(並列化)させる必要がある。本研究において、検出器として使用することを予定しているEMCCDカメラ(アンドール社)の画像読込速度は、最速11,074 frames/sであるが、画像読込速度が大きいほど露光時間が短くなり検出感度が低下してしまうため、前者のアプローチに対しては、適用可能な最大のデータ読込速度を実験をとおして慎重に見極めていく。後者のアプローチもイメージングできるエリアには限界があるが、開口数が比較的大きな10×の対物レンズを用いた場合でも、100ミクロン幅のマイクロ流路を100ミクロンの間隔で4本配置できることを既に確認している。本研究では、PDMS基板に4つのパラレル流路を設け、1 kHzのスクリーニング・レート((250 Hz/流路)×4)を達成することを目標に研究を実施する。
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Research Products
(9 results)